なし崩しに決まっていく外国人労働者受け入れ

日本経済新聞3月26日付5面より 外国人労働者を拡大、建設業で実習延長、東京五輪まで期間限定、政府・与党調整、再入国も認める。 政府・与党は人手不足が深刻な建設業で、外国人労働者の受け入れを拡大する方向で最終調整に入った。外国人向けの技能実習制…

移民による財政貢献

しつこいようですが、外国人労働者に関する話の続きです。前回の記事で、社会保障を目的とする移民を抑制するために英国やドイツ・スイスなどの国で移民の受け入れを制限しようとする動きが生じていると書きました。 このような動きは、外国人労働者は税金を…

外国人労働者受け入れについて〜欧州の場合

外国人労働者に関する議論の続き(こことここも参照ください)。すでに多くの移民がいる欧州では、労働移動を制限しようという動きが出ています。日本経済新聞1月7日付6面より 欧州内の移動、自由化鈍る、ルーマニアとブルガリア、検問廃止EUが延期――独、不…

外国人労働者受け入れについて〜受入拡大と国内の労働環境改善について

前回の続き景気回復に伴う人手不足を受けて、外国人労働者の受け入れの拡大に関する記事が目立ってきた。日本経済新聞2月15日付3面より 人手不足、経済に足かせ、保育所建設、入札不調、開園遅れ、トラック、荷物さばけず委託。 景気回復に伴う人手不足が日…

法人税パラドクスについて

日本経済新聞2月3日付2面より 税率下げても税収伸びる?――「法人税の逆説」首相も関心、欧州に先例、起業で潤う(エコノフォーカス) 法人税の税率を下げたのに税収が伸びる「法人税のパラドックス(逆説)」と呼ばれる現象が脚光を浴びている。欧州に先例が…

経済成長と貧困削減との関係

大和総研レポートより経済成長は貧困削減に役立つか?(1)を読みました。経済成長が国内の貧困の削減や格差縮小につがなるのかどうかというのは、経済の在り方を考える上で重要な問題だ。 どの国も高い経済成長を目指している。経済成長は所得の増大をもた…

国内における所得と富の格差と貯蓄率・経済成長率との関係

Worthwhile Canadian InitiativeよりEconomic Inequality, Saving and Economic Growthを読みました。ブログ記事ではOECD諸国を対象に、2000年代の家計の可処分所得と富(資産)の格差(ジニ係数)と貯蓄率と経済成長率の相関関係についての簡単な回帰分析がなさ…

外国人労働者受入について真剣に考える時期に来ている

日本経済新聞2月5日付2面より 外国人労働者拡大、静かに模索――「移民」は介護から?、技能実習見直し焦点(真相深層) 安倍政権は1月にまとめた成長戦略の検討方針に「外国人受け入れ環境の整備」と明記した。「移民」や「単純労働者」と言い出せば国論を二…

金融市場の開放性と通貨危機との関係

EconbrowserよりGuest Contribution: "Financial Openness and Currency Crises″を読みました。 Common wisdom often suggests that financial openness makes a country more vulnerable to a balance of payment crisis, as it allows foreign capital – w…

世界経済のトリレンマについて

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道作者: ダニロドリック,柴山桂太,大川良文出版社/メーカー: 白水社発売日: 2013/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (16件) を見る『グローバリゼーション・パラドクス』について、…

アゴラで『グローバリゼーション・パラドクス』が紹介されました。

アゴラで池田信夫氏による書評が掲載されました。 世界経済のトリレンマ - 『グローバリゼーション・パラドクス』アゴラのような読者の多いサイトで紹介されるとは大変ありがたいです。しかし、池田信夫氏が自身のTwitterで これは「TPP反対派のバイブル」ら…

グローバリゼーション・パラドクスの訳本を出しました

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道作者: ダニロドリック,柴山桂太,大川良文出版社/メーカー: 白水社発売日: 2013/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (16件) を見る同じ滋賀大学の柴山先生と共訳したダニ・ロドリッ…

日本経済新聞7月1日付3面より エコノフォーカス IT・工学や企業経営――外国人専門家なぜ来ない 優れた技術者や研究者といった「助っ人外国人」が日本に来ない。本国から親を呼び寄せやすくしたり、永住権を認める条件を緩和したりする制度が始まって1年あ…

Working Paperを発行しました。

滋賀大学経済経営研究所からWorking Paperを発行しました。タイトルは"R&D Internationalization, Knowledge Spillovers,and Governmental Policies for Attracting R&D-Related FDI"で、神戸大学経済学研究科の院生の松岡氏との共著です。論文誌投稿中のた…

TPPがもたらす動態的経済効果

FTA

RIETI(経済産業研究所)のHPに東京大学の戸堂康之教授によるTPPに関するSpecial Reportが掲載されていたので紹介します。 TPPの成長効果推計 1. これまでのTPPの効果分析 TPPがGDPに与える効果の推計は、さまざまな方法で行われている。最もよく知られている…

多国籍企業との緊張関係が、受入国企業の生産性を向上させる。

VOXよりMultinationals assist domestic suppliers? Perhaps think againを読みました。 (要旨) The positive spillovers from multinationals to the productivity of their host-country suppliers are empirically well established. Usually, it is assu…

ルービニのQE(量的緩和)批判

QEが招く10の問題点 日経ビジネスonlineより*1ルービニは、リーマンショックに始まる世界金融危機の発生を事前に予測したとして著名な経済学者だ。 そのルービニが、現在欧米諸国や日本が行っている量的緩和政策に対して10の批判を展開している。日銀は新た…

日本がTPPに参加表明。日本は何を勝ち取ろうというのか

ようやく15日に安倍総理がTPP参加を表明した。この数週間TPP参加を巡って、農業や医療など「聖域」の話ばっかりがマスコミに溢れ、こんな「守り」の話しかしないのであれば、TPP参加なんてやめてしまえば?なんて思っていた。 TPPのような国際交渉では、何を…

国際経済学のテキスト 頂き物

国際経済学―国際貿易編 (Minervaベイシック・エコノミクス)作者: 中西訓嗣出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2013/03/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る神戸大学時代にお世話になった先生が書かれた国際貿易論のテキ…

小麦だけ保護しても意味がない

日本経済新聞3月6日付17面に、日清製粉グループ本社社長の大枝宏之氏のインタビューが掲載されているが、小麦を原材料として加工するメーカーが小麦の貿易についてどのようにとらえているか知る上で非常に面白い内容となっている。 ――足元で円安が進んでいま…

日米自動車協議合意へ

日本経済新聞3月6日付1面より TPP車関税で日米合意、交渉参加、首相、来週にも表明。 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加への動きが最終局面に入った。米国が日本車にかけている関税を当面維持し、簡単な手続きで米国車を輸入できる仕組み…

輸入障壁とは:日米自動車協議から考える

前回、TPPへの参加に先だって自動車分野において日米で二国間協議が行われることとなったと書いた。日本がTPPに参加するためには、米国議会に交渉参加を認められなくてはならない。そのため、米国が特に関心のある事項に関しては、TPP本交渉に参加する前に事…

TPPようやく参加に、これからが本番

Yahoo!Newsより <TPP>関税に「聖域」代償も…交渉参加へ 安倍晋三首相は22日午後(日本時間23日午前)、オバマ米大統領との首脳会談後に記者会見し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加について「なるべく早い時期に決断したい」と…

農業活性化の論点の立て方

日本経済新聞2月19日付1面より 首相「農業、成長産業に」、競争力会議、農地フル活用、TPPへ環境整備。 政府は18日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を首相官邸で開き、農業強化策の検討に入った。首相は「農業を成長分野と位置づけて産業として…

TPPの最大恩恵国は日本?

日本経済新聞1月28日付17面より 経済教室 TPPの恩恵、日本が最大 ピーター・ペトラ氏*1 マイケル・プラマ氏*2 筆者らが開発した一般均衡モデルを使った試算では、交渉中の11カ国に日韓両国を加えた13カ国が参加するTPPが実現した場合、日本が最も恩恵…

米欧FTA交渉開始へ

日本経済新聞2月14日付1面より 米欧、FTA交渉開始へ、共同声明発表 米国と欧州連合(EU)は13日、自由貿易協定(FTA)を含めた貿易・投資協定の交渉を開始するとの共同声明を発表した。EUは6月末までの交渉入りを目指す方針を示した。米国とE…

TPPの行方

日本経済新聞2月2日付4面より TPP関税撤廃の例外焦点、首相、米国・党内両にらみ、首脳会談へ打開策模索 安倍晋三首相が環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加の是非を判断する時期を探り始めた。「聖域なき関税撤廃」を前提とした参加にはあく…

産業競争力会議と規制改革会議

安倍内閣が経済政策の第3の矢と位置付けている成長戦略*1の司令塔として、産業競争力会議と規制改革会議がある。産業競争力会議は、産業の競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具現化と推進を目的とした会議であり、規制改革会議は経済成長につながる規制…

本当に効果があるのか?賃上げ促す法人減税

日本経済新聞1月13日付1面より 賃金上げ促す法人減税固まる、平均給与増で税額控除、増加分の最大10%。 政府・自民党は2013年度税制改正に盛り込む雇用対策の税制の詳細を固めた。給与増を後押しする税制では、従業員の平均給与を増やした企業を対象…

安倍政権の経済政策続き

前回の続きです。政府は11日に緊急経済対策として10兆円以上の財政出動を決めています。対策の中ではインフラ・公共事業に1兆5千億円の予算が使われている一方で、9600億円を官民共同ファンドへの出資へと使うことが決定されている*1。官民ファンドとは、民…