米欧FTA交渉開始へ
日本経済新聞2月14日付1面より
米欧、FTA交渉開始へ、共同声明発表
米国と欧州連合(EU)は13日、自由貿易協定(FTA)を含めた貿易・投資協定の交渉を開始するとの共同声明を発表した。EUは6月末までの交渉入りを目指す方針を示した。米国とEUのFTAが実現すれば世界全体の貿易量の約3割を占める巨大市場が誕生する。国際的な貿易体制や日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加にも影響が及ぶ。
同日3面より
世界の通商、米欧ルールに、FTA交渉、農業など難題も。
米国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)は巨大な経済圏を生み出す可能性を秘める。単純合計でも世界の国内総生産(GDP)の約5割、貿易量の約3割を占め、世界の通商ルールを事実上決定する存在となる。だが米欧間には農業や政府調達などの難題が横たわり、交渉は曲折も予想される。
米EU間の関税は現在平均で約4%。世界的にみればすでに低い水準にある。ただ乗用車はEUが10%、米国も2・5%の関税が残る。関税が撤廃されれば双方ともに輸出を拡大できる可能性がある。EUのGDPを年0・5ポイント、米国も同0・4ポイント押し上げるとの試算もある。
米国とEUの経済圏が実現すれば、製品に関する規格や企業向けの産業規制、農産物などの品質基準が統合される可能性が高い。EUのデフフト欧州委員(通商担当)は13日、FTA交渉では自動車の安全基準の統一に力を入れると表明した。米国産車が欧州で販売する際に安全審査などの手続きを省け、欧州車も米国で販売しやすくなる。
基準の統一は米とEU内にとどまらない。合意がそのままデファクト(事実上の国際基準)となり、これを順守しない国・地域は巨大市場からはじき出される可能性がある。
もっとも米EUのFTAが短期間に妥結する可能性は大きいとはいえない。今月上旬にワシントンで開かれたフロマン米大統領副補佐官とデフフト欧州委員の協議。EUは米国産牛肉の輸入に向けた規制緩和を提示したが、米国は農畜産物の検疫制度をEUの非関税障壁だと指摘し、交渉入りに難色を示した。
FTA交渉の優先事項に「牛肉などの農業輸出」を掲げる米国。伝統的に遺伝子組み換え食品を拒み、製品の安全基準に厳格なEU。両者の溝は深い。
去年の夏、米国とEUがFTAを検討していることを紹介した(ここを参照)が、半年たって交渉開始に至った。
記事にもあるように、米欧間で農業に関して大きな隔たりがあり交渉が妥結に至るかどうかは不明だが成立すれば世界の通商体制に莫大な影響を与えるのは間違いないだろう。
また、FTAには先行効果があるために(ここを参照)、交渉開始自体が米欧間の貿易促進につながることも期待される。
このような中、日本は米国とのFTAであるTPPへの参加も表明できず、欧州との経済連携も交渉入りへの宣言はまだだ。
世界の国々はそれぞれFTAネットワークの形成に力を入れている。日本はぐずぐずしている場合ではないのだ。