なし崩しに決まっていく外国人労働者受け入れ

日本経済新聞3月26日付5面より

外国人労働者を拡大、建設業で実習延長、東京五輪まで期間限定、政府・与党調整、再入国も認める。
政府・与党は人手不足が深刻な建設業で、外国人労働者の受け入れを拡大する方向で最終調整に入った。外国人向けの技能実習制度を実質的に拡充し、最長3年間の受け入れ期間を2年延ばしたり、過去の実習生の再入国を認めたりする。受け入れ人数はピーク時に現状の2倍の3万人規模に増える見通し。2020年の東京五輪に向け「即戦力」を活用し、膨らむ建設需要に対応する。
 政府・与党は幅広い業種で外国人労働者の活用を検討しているものの、意見集約には時間がかかると判断。まず建設業で20年度までの期間限定で外国人を増やす考えだ。
 発展途上国の外国人を対象にした技能実習制度は現在、受け入れ期間が3年間。希望者についてはさらに2年間働けるようにする。実習を終えて帰国した外国人も一定期間をおけば最長で3年程度、再入国を認める。
 従来の滞在期間の3年を超える分は、いずれも法相の指定する「特定活動」という在留資格を与え、特別に働けるようにする。1万5千人規模の受け入れ人数はピーク時に3万人程度になる。
 技能実習制度を巡っては、実習生の劣悪な労働環境や賃金未払いなどの問題も指摘されている。行政による立ち入り検査や、国や建設会社などでつくる協議会による監視などを通じて、適切な制度運用を目指す。
 自民党は人手不足の業界全般に外国人労働者の活用を促す提言をまとめた。技能実習制度は優秀な人材に限り2年間延長し、再入国も認めるなど制度そのものの拡充を提案。1社あたりの受け入れ人数枠も従業員の5%から1割に増やすよう求めた。

最近何度も書いてきた外国人労働者問題だが、政府はどうやら本腰で受け入れ拡大を実現させるつもりだ。
その理由は、前も書いたように(ここ) 建設業や介護分野で人材不足が問題となっているからだ。
特に、建設業については、震災復興と東京五輪と大規模な特需がある上に、自民党が「国土強靭化計画」で大規模な公共事業を約束しているように、公共投資を経済成長の柱としようとしているために、この部門での人材不足は何としても避けたいと思っているからだろう。

私は、外国人労働者の受け入れの拡大自体には賛成だが、こういうなし崩し的な労働者受け入れの拡大はあまり感心しない。
政府は東京五輪まで(2020年まで)の期間限定での受け入れ拡大を考えているが、世の中そんな都合よくできているものではない。
例えば第2次世界大戦後、ドイツは膨大な復興需要に対して労働者が不足していたために外国人労働者の受け入れを始めたが今や欧州随一の移民大国である。

2020年には少子高齢化による労働者不足の問題は今よりもはるかに深刻になっていることは容易に予想がつく。きっかけは一時的な建設需要の増大に対応するためだとしても、これを機に外国人労働者を受け入れることを前提とした制度設計を手掛けるべきだろう。

今日はこの辺で