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日本経済新聞7月1日付3面より
エコノフォーカス IT・工学や企業経営――外国人専門家なぜ来ない
優れた技術者や研究者といった「助っ人外国人」が日本に来ない。本国から親を呼び寄せやすくしたり、永住権を認める条件を緩和したりする制度が始まって1年あまりだが、利用件数は目標の4分の1だ。海外から優秀な人材を呼び込むには制度の改善とともに、魅力のある税制や街づくりへの対応も必要になりそうだ。
「私の収入では無理なんですね」。30代のインド人の研究者は、優遇制度の相談で訪れた都内の行政書士事務所で肩を落とした。学歴や日本語能力は問題なかったが、年収が足りず認定基準に届かなかった。
優遇制度は「高度人材ポイント制」と呼ばれ、2012年5月に始まった。ITや工学の技術者のほか、企業と大学の研究者、外資系企業の幹部が主な対象だ。年収や学歴を点数にして、70点に達すると認定を受けられる。相談を受けた行政書士の飯田哲也氏は「若い大学の研究者だと高い年収をもらっている人は少ない。あまりにも条件が厳しい」と話す。
高度人材と認められても、恩恵を受けるまでに第2のハードルが待ち受ける。外国人に人気なのは子育てや家事のために、本国から親やメイドを呼べる制度だ。しかし親を呼ぶには年収1000万円以上で子どもが2歳以下、メイドを呼ぶにも年収1500万円以上でメイドの月収20万円以上、子どもが12歳以下でなければならない。
高度人材が受けられる他の恩恵は永住権の取得条件の緩和。通常の「在留10年」から、「高度人材として働いて5年」になる。しかし永住を望む外国人の多くは働く前に5年ほどかけて日本の語学学校や大学で学んでいる。「働き始めて5年もすれば在留期間が10年になるため、永住権のためにポイント制を使う人はほぼ皆無」(飯田氏)
ポイント制の利用は開始11カ月で434人と、開始1年で2000人という最初の目標を大きく下回っている状況だ。日本は国際的に見ても、高い能力を持つ外国人の受け入れが遅れている。高等教育を受けた人口に占める外国人移住者の比率で見ると、日本は先進国で最低の0・7%。28%のオーストラリアや、10%台の欧米主要国と大きな開きがある。
足元ではこうした外国人の受け入れ人数は年1万人ほどにとどまり、リーマン・ショック前の07年の半分だ。急速な少子高齢化に直面するなかで、海外からより多くの優秀な人材を招くことが急務となり、政府は10年にまとめた「新成長戦略」でポイント制の導入を決めた。
経済産業省の試算によると、日本で働く専門職の外国人を20年までに倍増した場合、実質GDP(国内総生産)を1・7%、金額にして8・6兆円押し上げる。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「日本に無い技術や発想が生産性を上げるうえ、収入を国内で使えば消費の押し上げにもつながる」と話す。
政府が高度人材を増やすと言いながら使い勝手の悪い制度になったのは、「むやみに外国から人を呼ぶと不法就労が増える恐れがある」(法務省幹部)との不安が強かったためだ。しかし昨年末に発足した安倍晋三政権は年収の条件や、永住権の取得期間を緩和する方針を打ち出しており、年内に新しいポイント制を始める方針だ。経済再生を第一に掲げる政府が、どこまで魅力ある制度をつくれるかに注目が集まる。
1年半くらい前に優秀な外国人から避けられる日本で、外国人の高度人材を日本にもっと招き入れるために、政府がポイント制の導入を検討しているという記事を書いたが、その後実際にポイント制は導入されたものの、制度の使い勝手が悪く外国人材の流入がそれほど増えていないという話。
最近テレビで日本の文化にあこがれて日本にやってくる外国人が良く取り上げられるが、制度としては外国人にとって日本の門戸は狭いということですね。
今日はこの辺で