農業活性化の論点の立て方

日本経済新聞2月19日付1面より

首相「農業、成長産業に」、競争力会議、農地フル活用、TPPへ環境整備。
政府は18日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を首相官邸で開き、農業強化策の検討に入った。首相は「農業を成長分野と位置づけて産業として伸ばしたい」と強調。林芳正農相は農産物輸出の倍増や農地のフル活用を目指す方針を表明した。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加表明をにらんだ環境整備で、6月をめどにまとめる政府の成長戦略に盛り込む。
首相は農業について「従来の発想を超えた大胆な対策を講じていきたい」と力説。「若い人たちに魅力的な分野にしていきたい」とも述べ、農業と、流通、IT(情報技術)など多様な業種との事業提携を政府が後押しする考えを示した。
林農相は(1)農産物の輸出拡大(2)農商工連携の強化(3)農地の有効活用――の3本柱で農業の競争力を高めると説明した。4500億円にとどまる農林水産物の輸出額を2020年に1兆円に倍増させるため、2月に発足した農業強化の官民ファンドなども活用して産業間の連携を強める。
 農地の活用では、全体の1割弱にあたる約40万ヘクタールの耕作放棄地の解消に取り組む。高齢で農業をやめる農家から都道府県が農地を一時的に借りる仕組みを設け、借り手が見つからない場合は農地を集約したうえで意欲のある農家に転貸する。すでに耕作放棄地となった農地は、ほかの農家が使えるようにするための手続きを簡素化する。
一方、競争力会議の民間議員からは、より踏み込んだ農業改革を求める意見が出た。
 ローソンの新浪剛史社長、楽天三木谷浩史社長ら5人は連名で改革案を提出。現在は1戸あたり2ヘクタールにとどまる平均的な農地の規模を10〜15年で50ヘクタールまで広げたり、コメの生産調整(減反)を段階的に縮小したりすることを求めた。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長ら5人も連名で「補助金に依存しない農業を確立すべきだ」と提言した。

TPPに参加するかしないかにかかわらず、日本の農業の生産性を向上させることが悪いはずはない。なので、農業活性化の議論を行うことは結構だとは思うが、TPPで貿易自由化すれば農業は壊滅すると農業団体が叫ぶ中、「農業は成長産業にできる」とか「農業を輸出産業に」などと会議で唱えても説得力はない。

産業競争力会議の資料*1を見ると、日本の農業の潜在性は高く、政府が適切なs支援を行えば十分成長でき輸出も伸ばすことができると明るい話が並んでいる。

しかし、日本の農業の競争力を高めたいのであれば、まずなぜ日本の農業の競争力は低いのか、なぜ生産性が向上しないのか、なぜ稼げないのかについてまず議論すべきだろう。農業政策がまずいのか、農業を取り巻く制度に欠陥があるのか、技術が足りないのか、経営力が足りないのか、それがはっきりしなければ産業政策などできるわけないからだ。
輸出を促進したいのであれば、現状なぜ日本の農作物の輸出が困難なのか、6次産業を促進するのであれば現状なぜそれができないのか、農地の有効活用を目指すのであれば、なぜ現状農地は有効に活用されていないのか、それが明らかにされない限り、有効な対策は期待できないだろう。

さらに、産業競争力会議には農水関係の議員がいないのも問題だ。例えば自動車産業に対する政策を行う際に自動車メーカーの意見を聞かないということがあるだろうか?輸出に積極的な農業企業、6次産業を積極的に推し進め成功を収めている農水関係者の意見こそが最も重要ではないだろうか?

農業の生産性向上、生産・輸出の拡大に積極的な意識を持つ農業関係者を交え、日本の農業の根本問題に関する現状認識を共有するところから始めなければ、本当の意味での農業の成長産業化は起こらないだろう。
今日はこの辺で