TPPようやく参加に、これからが本番

Yahoo!Newsより

<TPP>関税に「聖域」代償も…交渉参加へ
安倍晋三首相は22日午後(日本時間23日午前)、オバマ米大統領との首脳会談後に記者会見し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加について「なるべく早い時期に決断したい」と表明した。
(中略)
首相は会談で、TPPに関する自民党の公約を説明し、自動車や国民皆保険制度などに関する党の基本方針も伝えた。そのうえで、(1)日米両国ともに2国間貿易上のセンシティビティー(敏感な問題)が存在する(2)最終的な結果は交渉の中で決まる(3)一方的に全ての関税撤廃を約束することを求められない−−ことを提起し、オバマ氏も同意した。
 米側に「例外」を認めさせ、共同声明という形にすることに成功した首相。同行筋は「声明を発表できるかは前日まで分からなかった。オバマ政権は本当にギリギリ詰めてくるからね」と振り返る。
 だが、米側もしたたかだった。日米両政府が事前の折衝で準備したのはセンシティビティーを認めつつ、「最終的な結果は交渉の中で決まる」というところまでだった。

なんで、こんな当たり前のことを確認しなければならないだろう。
どの国にもセンシティビティーは存在する。だからこそ相手にその市場を開放させるように交渉する必要があるわけだ。事前に一方的にすべての関税撤廃を約束することが求められないのも当たり前だ。事前に関税撤廃を約束するのであれば、そもそも交渉する必要がない。どの品目まで関税撤廃をするのか話し合うのが「交渉」なのだ。なので、最終的な結果は交渉の中で決まるのも当たり前だ。
つまり、この会談で米国は何の約束もしていないのに等しい。「関税撤廃の例外を作りたければ交渉の中で主張してください。うまくいけば関税撤廃が実現するかもしれませんよ。ただし、交渉ですからそれが実現するかどうかはわかりませんけどね。」と言っているのに過ぎないからだ。

とにもかくにもようやく交渉参加の見通しは立った。しかし、ここからが本番だ。問題は交渉に参加するかしないかではなく、交渉によって何を勝ち取り何を失うかだからだ。

米国は早速仕掛けてきた。
日本経済新聞2月25日付3面より

日米自動車協議、TPPに先行、輸入規制緩和など。
政府は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に先行して、米国と自動車分野の協議を始める。安倍晋三首相は今週にも交渉参加を表明する考えだが、実際に加われるのは9月の会合からになる。このため最大の交渉相手である米国との懸案である自動車分野の協議の場を設け、TPP交渉に先駆けて実質的な協議を始める。
 日米両政府は事務レベルで、協議で扱う10程度の項目の最終調整に入った。関係者によると、米国は協議での合意内容を日本が確実に実行することを担保する仕組みにするよう求めているもようだ。
 具体的には、より簡単な手続きで米国車を輸入できるようにしたり軽自動車の税制優遇を見直したりすることなどが論点になる。「輸入自動車特別取扱制度(PHP)」と呼ばれる制度は、輸入台数が2000台までなら検査用のサンプル車を国に出さなくても日本の道路で運転できる。米国はこの台数を5000台程度まで引き上げるよう求めている。
 日本の自動車関税はすでにゼロだが、米国はかねて軽自動車を優遇する日本の税制などが「非関税障壁」となり、大型車中心の米国車の販売不振につながっていると主張してきた。日本は「非関税障壁は存在しない」(経済産業省幹部)との立場だが、TPP交渉に先行して協議を進めて妥協点を探る。
 政治力の強い米自動車メーカーや労働組合は、日本のTPP交渉参加に反対。最終的に日本の交渉参加を認めるかの権限も米議会が握る。自動車分野の先行協議は、米国としては日本に強く市場開放を迫る姿勢を示せる。日本にとっても、あらかじめ不合理な条件を受け入れさせられる事態を防げる利点がある。

TPPに参加するためには、米国議会で参加を認められなければならない。そのため、米国は議会を納得させるという理由で、二国間交渉によって日本に要求を突きつける。
この二国間交渉では、日本はひたすら守りの立場だ。米国の主張をどこまで受け入れるのかだけが論点であり、日本が米国に何かを要求することはできない。
これは日本が「後から交渉に参加させてもらう」ために起こったことだ。しかも、日米首脳会談で関税撤廃の例外項目は交渉次第で実現するなどと当たり前のことを声明に入れてもらったがゆえに、米国の自動車関税維持というTPPの建前上あり得なかったはずの項目が堂々と入れられることになってしまった。こんなことは本来TPP本交渉で話し合いましょうで退けるべき話であるはずだ。
つまり、日本の農業に対する関税撤廃の例外は、本交渉次第と先延ばししたうえで、米国の自動車に対する関税撤廃の例外は先行する二国間交渉によって本交渉に入る前に先に決めてしまおうということになっているのだ。

今後、日本は二国間交渉でいかに非合理な要求を呑まないようにするのかが問われる。支障のない要求は最大限受け入れながら、受け入れがたいことはTPP本交渉に先延ばしするように交渉を持っていくことができるのかがカギだろう。

今日はこの辺で