ルービニのQE(量的緩和)批判

QEが招く10の問題点 日経ビジネスonlineより*1

ルービニは、リーマンショックに始まる世界金融危機の発生を事前に予測したとして著名な経済学者だ。
そのルービニが、現在欧米諸国や日本が行っている量的緩和政策に対して10の批判を展開している。日銀は新たな新総裁の下、より一層の量的緩和策を展開すると思われるが、万能の政策などこの世になく、どんな政策にもコストやリスクが付きまとう。改めて量的緩和政策のコストとリスクをしっかりと認識する必要があるだろう。

ルービニの批判は次のようなものだ。

(1)純粋な「オーストリア学派」のアプローチ(つまり緊縮策の採用)によって、資産や信用バブルを崩壊させようとすれば不況を招く恐れがある一方、QE政策に依存し、必要な民間・公共部門の債務削減を先送りしすぎれば、至る所で「ゾンビ」が跋扈する事態となりかねない
(2)繰り返しQEを導入すれば、いずれ実体経済活動への波及経路が目詰まりを起こし、効果がなくなる可能性が出てくる。
(3)金融緩和により通貨安を実現するというQEの為替経路は、いくつかの主要中央銀行が一斉にQEを実行すれば、効果はなくなる。すべての国の通貨が同時に下落することなど不可能である以上、すべての国の貿易収支が同時に改善することもあり得ない。
(4)先進国がQEを実施すれば過剰な資本が新興国流入するため、新興国は困難な政策誘導を迫られる
(5)持続的なQEは、QE実施国のみならず、QEの影響が波及する国でも資産バブルを招く恐れがある。そうしたバブルは株式市場から住宅市場、国際商品市場、国債市場、信用市場まで、様々な市場で起こり得る。
(6)QEは必要な経済改革を断行する政府の意欲をそぐという問題を引き起こしかねない。巨額の財政赤字が通貨の増発により賄われ(マネタイゼーション)、しかも金利が過度に低水準に維持されれば、市場が政府に財政規律を課すことが妨げられ、必要な財政の緊縮が先送りされてしまう。
(7)QEからの出口戦略は難しいQEからの脱却が遅れて時機を逸すれば、インフレが加速し、資産と信用のバブルが膨らむことになる。
(8)長期にわたり実質金利をマイナスにとどめることは、所得と富を債権者と貯蓄者から債務者と借り手に再配分することを意味する
(9)QEを含む非伝統的な金融政策は、深刻な意図せざる結果をもたらしかねない
(10)伝統的な金融政策に戻るための道筋を完全に見失うリスクもある

今日はこの辺で

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