本当に効果があるのか?賃上げ促す法人減税

日本経済新聞1月13日付1面より

賃金上げ促す法人減税固まる、平均給与増で税額控除、増加分の最大10%。
政府・自民党は2013年度税制改正に盛り込む雇用対策の税制の詳細を固めた。給与増を後押しする税制では、従業員の平均給与を増やした企業を対象に、支払給与総額の増加分の最大10%を法人税の納税額から差し引く。雇用を増やす企業には別の減税制度を適用。給与と雇用増をそれぞれ促す2つの減税で、雇用環境の改善を目指す。
(中略)
企業が従業員に払う給与を増やすと納税額が減る制度を導入する。従業員1人あたり平均給与を増やした企業を対象とする。基準となる年を設け、その年と比べて給与の支払総額を増やしていれば、増加分の最大10%を法人税額から差し引く仕組みを軸に調整している。
 法人税から差し引ける上限は2割程度、期間は2〜3年の措置を想定している。給与を少しでも増やせば減税対象になるのか、一定の増額基準を設けるかは今後詰める。
新規採用を積極的に増やす企業には、既存の「雇用促進税制」で対応する。雇用を一定数を超えて増やした企業に対し、増加数1人あたり20万円を法人税から差し引く仕組みだ。給与増と雇用増の2点で、企業活動を後押しする。

雇用者を増加すれば減税するという「雇用促進税制」は、明らかに企業の雇用コストを低下させるため、雇用を増やす効果があるのはわかる*1
しかし、給与支払いを増やす企業に減税というのは本当に効果があるのだろうか?企業の目的はあくまでも税引き後の利潤の最大化である。例えば、販売収入が変わらない場合、給与支払いを1000万円増やすということは、税引き前の利潤を1000万円減少させることになる。記事にあるように、給与増加分1000万円のうちの10%である100万円を減税したところで、企業の税抜後の利潤は900万円減少するため、企業にとっては損な選択であり実行するとは到底思えない。

また、経済同友会の長谷川閑史代表幹事が記者会見で述べているように、企業が一度上昇させた賃金を引き下げるのは容易でないのに対し、減税期間が2〜3年では減税があるから賃上げしようと思う企業は出てこないだろう*2

何らかの原因で、売り上げは伸びていないが給与支払いは増やさざるを得ない企業にとっては、賃金コスト増加を抑制する意味で効果があるとは考えられるが、いったいそんなケースがどれほどあるのだろうか?

意味があるとは思えない政策です。今日はこの辺で

*1:ただし、法人税から減税する形で支給するので法人税を払っていない企業には効果はない

*2:日本経済新聞1月17日付5面より