安倍政権の経済政策続き

前回の続きです。

政府は11日に緊急経済対策として10兆円以上の財政出動を決めています。対策の中ではインフラ・公共事業に1兆5千億円の予算が使われている一方で、9600億円を民共同ファンドへの出資へと使うことが決定されている*1。官民ファンドとは、民間投資を促進するために官民共同で資金を供給する仕組みで、政府系金融機関普通株優先株や返済順位の低い劣後ローンなどリスクが高めの資金を供給することで、民間金融機関による出資・融資の呼び水とし、民需や雇用への波及効果を高めることを狙いとしている*2

基金には次のように政策目的に応じで様々な種類のものがある*3

  1. 先端技術を持つベンチャーの資本強化 1000億
  2. イノベーションを生み出す基盤の整備 2300億
  3. 電気自動車の充電設備など省エネ促進 1200億
  4. 企業の海外進出を官民で支援 700億
  5. 企業のエネルギー節約を支援 2000億
  6. 職業訓練の支援など雇用創出 1600億
  7. 農林水産業などの競争力向上 800億

もちろん、損失が発生すれば国民負担となるため、出資する際にはそれが収益の出せる事業であることを見抜くことと、出資後も対象事業が失敗しないかを監視することが必要だ。当たり前だが、お金を出して終わりではない。結果を出してこそ成功だという姿勢が必要だが、これだけ多くのファンドを作ってちゃんと監視の目が働くのかは大いに不安だ。

このような官民ファンドの乱立に対して、日本経済新聞は1月10日付2面の記事で、民間だけでも行えるはずの融資に政府が出資者として参加するメリットとして、①資金面でリスク分散ができ事業の信用度が高まる、②官がかかわれば事業の制度的障害が取り払われやすい、の二つを挙げている。その反面、デメリットとしては、①官の資金が入ると利益追求という本来のビジネスの姿があいまいになる、②誰が意思決定したのか責任の所在が不明確になることが挙げられている。

官の資金が呼び水となって、民間の投資が活性化されれば成功となるが、出資自体が目的となり損失が発生した時の責任も不明確なままでは、不振企業の延命に使われる可能性もある。これらのファンドが本当に実りのある政策となるのか注目していきたい。

*1:数字は日本経済新聞1月12日付5面より

*2:日本経済新聞1月8日付1面より

*3:日本経済新聞1月12日付5面より