日米自動車協議合意へ
日本経済新聞3月6日付1面より
TPP車関税で日米合意、交渉参加、首相、来週にも表明。
日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加への動きが最終局面に入った。米国が日本車にかけている関税を当面維持し、簡単な手続きで米国車を輸入できる仕組みを拡大することで日米両政府が大筋合意した。軽自動車の優遇税制見直しなどは今後の協議に委ねる。自動車分野の協議にめどがついたため、安倍晋三首相は来週にも交渉参加を表明する。
米国やシンガポールなど11カ国が参加するTPP交渉に入るには、各国から承認を得る必要がある。とくに米国は、TPP交渉参加の事実上の条件として、日本に対して自動車の市場開放や、かんぽ生命保険の事業拡大の見直しを求めてきた。
米国が条件を提示する背景には、他国との通商交渉で米議会の承認が必要というルールがある。米議会では日本がTPPに参加すれば米市場に日本車が大量に流入し、米国自動車メーカーの売り上げが減るとの懸念が根強い。すでに日本側の自動車関税はゼロだが、税制や認証手続きなど関税以外の障壁が多く閉鎖的だと主張してきた。
打開策の一つとして、日本はTPP交渉で、米国の自動車関税の撤廃に長期間の猶予を設けることを容認する。米国は乗用車(2・5%)とトラック(25%)に関税をかけている。TPPでは関税の即時撤廃が原則だが、米国が実際に撤廃するのに猶予期間をつくる。
米韓自由貿易協定(FTA)では同分野の関税撤廃に5〜10年の猶予期間を設けていたが、さらに長い期間になる見込みだ。実際にどれくらいの猶予期間にするかは今後の交渉で詰める。
日本が自動車分野で米側の主張を受け入れるのは、コメや砂糖など農産品で関税撤廃の例外扱いを求めるうえで、一定の譲歩が必要とみているためだ。関税撤廃の例外を相互に認めることで、日本のTPP交渉参加問題が入り口で膠着する事態を打開する狙いがある。ただ、こうした動きが広がれば、ベトナムなど新興国で高い関税が温存されるなど貿易自由化の水準が下がる懸念もある。
「輸入自動車特別取扱制度(PHP)」も見直す。同制度は輸入台数が2000台までなら簡単な検査で国内を走ることができる仕組みだが、上限を5000台程度に引き上げる。
前回、日本の通商外交の腕の見せ所と書いた日米自動車協議だが、あまりにもあっけなく片が付いた。
関税、輸入手続き、技術基準、税制、流通など10分野ほど項目があるとの報道があったが、記事内では関税と輸入手続きの二つで合意したとあった。税制に関しては先送りにし、技術基準、流通などでは妥協しなかったことになる。
無理な条件を呑まされなかった(輸入手続きの簡素化は他の分野に比べれば一番厳しくない条件だと思う)という点では素直に評価したいところだ。その一方、自動車関税の撤廃に猶予を作ることを許したことは、TPPから得たはずの利益を損なうことになるのでもったいない話と言わざるを得ない。
その理由は、記事内にあるように日本側が一部の農産品に対する関税撤廃の例外を得たいと考えているからで、実際に今後の交渉で関税撤廃の例外を得るのであれば、今回の日本側の譲歩は交渉の戦略として評価されることになるだろう。
しかし、記事内にあるように、日米で即時関税撤廃の例外を作ってしまったことは、今後のTPP交渉においてマイナスの影響を及ぼす可能性がある。自国の市場を開放したくないアジアの国々などはこのことを盾に自国市場の開放を先延ばしにしようとするだろう。そうなればTPPによって得る成果はどんどん少なくなっていくだろう。
しかし、あれだけ日本の自動車市場は閉鎖的だと騒いでいた米国が輸入手続きの改善ひとつで手を引いたのは笑える。ほしかったのは日本市場の開放より、自国市場の保護ということやね。そういう意味では日本も米国も同じということ。
とはいえ、今回の日米協議は、即時関税撤廃は理想であり、現実的には交渉する中で例外項目が出来上がっていくということを示すいい見本になった。交渉に参加するかしないかではなく、参加して何を獲得し何を譲歩するのかを得るかということを議論していくべきなのだ。
今日はこの辺で