オランダ病は経済成長を阻害するのか?

Roubini Global EconomicsよりThe Missing Link Between Dutch Disease and Growthを読みました。

オランダ病とは、国内に大量の天然資源が発見されたり、大量の経済援助や出稼ぎ労働者からの仕送り、国際投資の流入などで、国内に外貨が急速に流入することによって実質為替レートが増価していき、それによってその国の工業製品の生産と輸出が減少していくことです。オランダ病という名前が付いている理由は、1960年代にオランダで大量の天然ガスが発見され、そのことがオランダに大量の外貨流入とそれによる実質為替レートの増価をもたらし、国内の製造業の国際競争力が損なわれていったことからきています。

このブログ記事では、このようなオランダ病の存在と、オランダ病が長期的な経済成長に与える影響について書かれています。
記事内では、過去のオランダ病に関する研究を分析した結果、天然資源の発見などによる外貨流入が国内の製造業の生産と輸出を減退させるというオランダ病と呼べる現象が実際に起こっていることは確認されたが、このオランダ病がその国の長期的な経済成長を引き下げる効果があるとは確認されなかったと述べられています。

このため、急速な外貨流入による実質為替レートの増価がその国の経済成長を損なうかどうかは、その増価が一時的な過剰な増価なのか、経済のファンダメンタルズを反映した増価なのか、過剰な外貨の流入が国内にバブルのような経済過熱をもたらすかどうかにかかっており、オランダ病の悪影響を防ぐためには、政府は財政支出を調整して経済過熱を防ぐ必要があるとこのブログ記事では述べられています。

現在、アメリカの金融緩和によって生じた大量の資金が成長の見込める新興国へと流入しており、新興国は外国資本の過剰な流入による為替レートの増価が国内製造業の輸出に悪影響を及ぼすと考えて、為替介入や外貨流入規制などを行っています。通貨安戦争とも呼ばれるこの現象は、途上国の経済発展にとって自国通貨は安い方が望ましいという考えに基づいています。

しかし、このブログ記事の分析は、外貨流入による自国通貨の増価は、それだけがその国の経済成長を損なうとは限らず、経済過熱を招かないような財政政策を行うことによって、外貨流入がもたらすメリットを享受することが可能だということを意味しています。

今日はこの辺で