トヨタ、開発を完全現地化

日本経済新聞4月6日付1面より

トヨタ、開発を完全現地化、まず米で新型車、ニーズ対応早く。
トヨタ自動車は海外で販売する車を対象に開発機能を現地に移す。まず米国で現地技術者が全面的に開発した乗用車を年内に発売。同様の手法を中国などにも段階的に広げる。日本に集中する開発機能を世界の主要市場に移し、現地のニーズを取り込むグローバル経営を加速させる。
 世界の新車販売は従来の大市場である米国や欧州に加え、中国など新興市場が急拡大。地域で異なる消費者ニーズを迅速に反映するため、トヨタは開発をどこまで現地に任せるか検討してきた。
 開発は商品企画からデザイン・設計を経て、試作・評価するプロセス。トヨタは部品の採用など最終的な生産立ち上げまでの詰めの作業を含め、海外市場で主に販売する車では原則、現地に開発の権限を移し、日本側が支援に回る体制にする。
 第1弾として米国を選び、中型車「アバロン」の新モデルを年内に米国で発売する。同車はトヨタとして初めて米国が開発の責任を持ち、生産まで一貫して現地チームが主導。従来の実質的な日本の研究部門の管理から自立した形になる。
 現地化に向けトヨタは現地エンジニアを2割強増やす。年末までに150人を新規に採用し、今後5年間で100人を追加する計画。IT(情報技術)との融合を進めた車の開発を強化する狙いで、シリコンバレーに研究拠点を設置する。
 一方、中国では、トヨタ江蘇省に最新の実験設備を備えた大規模開発拠点を設置し、13年に稼働させる予定。段階的に現地主導の開発体制に移行し、他の新興国でも同様の取り組みを広げる方針だ。

企業の国際化とは、まず販売が国際化し(輸出など貿易の拡大)、その次に生産が国際化される(直接投資による現地工場の設立)。その次の段階が、R&D(研究開発)活動の国際化だ。
最近、日本企業の国外研究開発拠点のニュースを頻繁にみるようになってきたが、今回の様な"完全"現地化をトヨタの様な日本を代表する企業が選択したことは、日本企業の国際化の大きな流れの一つの象徴のように思われる。

本国でのR&D拠点で集中して研究開発を行い、海外の各市場に統一したモデルを供給するのか、各地域にR&D拠点を分散して現地のニーズの多様性に細やかに対応するのとどちらの方が望ましいのかというと、研究開発の規模の経済性と研究開発の分散コスト、それと各市場の異質性に依存すると考えられる。トヨタが完全現地化を選択したということは、研究開発の規模の経済性を犠牲にしても各市場の異質性に対応することの方が総合的に有利だと判断したからだと考えられる。
このような各市場の異質性への対応を考えたR&D活動国際化の理論モデルというのを構築するのも面白そうだと思います。

今日はこの辺で