ハイアールは日本の家電業界に何をもたらすのか?

日本経済新聞2月16日付9面より

ハイアール、「三洋」製品投入、中韓大手、日本で攻勢、高価格冷蔵庫など60種。
(前略)
ハイアールは今年1月に三洋電機から白物家電事業を買収した。日本で展開してきた「ハイアール」ブランドの家電製品に加え、三洋から取得した「AQUA(アクア)」ブランドで高価格帯の冷蔵庫と洗濯機などを日本で販売する。
 英調査会社のユーロモニターインターナショナルによると、11年のハイアールの冷蔵庫と洗濯機の世界シェアはそれぞれ16・5%と12・3%で最大手。日本では知名度も低く、低いシェアにとどまっていた。アクアブランドの冷蔵庫と洗濯機でそれぞれ「15年にシェア15%以上を目指す」(販売会社のハイアールアクアセールスの中川喜之社長)という。
 広告宣伝も増やし、ハイアールブランド単体で11年12月期に100億円程度だった日本での売上高を、アクア分を加算して12年12月期に500億円規模に拡大する計画だ。
ハイアールはグループのアジア地域統括本社を大阪市に設置した。15日に東京都内で記者会見したハイアールグループの張瑞敏・最高経営責任者(CEO)は、三洋が培ってきた開発力を取り込み「白物家電のトレンドをけん引する日本からアジアの需要を獲得する」と宣言した。
(中略)
世界市場で力を付けてきた中韓の大手家電メーカーが、コスト競争力や品質、性能で日本製品と同等かそれ以上の新製品を投入する体制が整う。長らく日本メーカーの独壇場だった国内市場の競争が一気に激しくなりそうだ。

日本経済新聞2月17日付39面(地方経済面)より

中国ハイアール、京都に研究拠点、洗濯機開発へ。
中国の電機大手・海爾集団(ハイアール)は16日、京都市南区に研究開発拠点を設けることを明らかにした。三洋電機から取得した「AQUA(アクア)」ブランドの洗濯機を開発する。月内に完成し、3月末に本格稼働させる計画だ。外資系企業の研究拠点は、2010年にも韓国LG電子が開設。京都大学など有力大学が集積する京都に、開発拠点を設ける動きは今後も広がりそうだ。
 ハイアールは「京都R&Dセンター」を南区久世地域に設ける。周囲に久世工業団地や日本電産などの大手電子部品メーカーが立地する。敷地面積は1650平方メートル。3階建てで、延べ床面積は3000平方メートル。既に着工しており、三洋に所属していた開発陣など100人を配属する予定。
 新拠点は滋賀県草津市の三洋の旧草津工場と大阪府の販売会社と連携する。「15年に国内シェア15%」の目標を達成するため、関西で洗濯機の開発、製造、販売を手掛ける体制を築く。

世界市場において日本の家電メーカーが中韓勢に対して劣勢に立たされていることはよく言われているが、ついに日本国内市場にも中韓企業が進出してきているということだ。
このことを日本家電の凋落ととらえる人も多いだろうが、私はこのような動きは決して悪いことではないと思う。日本の電機企業からするといい迷惑かもしれないが、活力がなくなった国内企業より、活力のある外国企業が経営する方が、国内の雇用増加につながり、国内経済化の活性化につながる可能性は高いからだ。
中国企業が日本で研究開発を行うことで、日本からの技術流出を懸念する人もいるかもしれないが、以前スウェーデンに関する研究を紹介したように(ここ)、外資系企業による国内企業の買収は、国内企業が保有していたR&D部門や本部統括部門の国外流出をもたらすというより、国内でのR&D活動の拡大をもたらすことになることが示されている。

昨日の記事で書いたように、日本全体で見れば外国企業は日本から離れており、このことと国内企業の国外移転が、ともに国内雇用の減少につながると懸念されているのが現状であり、そのことから考えると、ハイアールの様な中国企業の日本進出は歓迎すべきことだと思う。

今日はこの辺で