優秀な外国人から避けられる日本

11月22日の国際経済論の講義で触れた日本にやってくる専門技術を持った外国人労働者が減少していることを報じた日経の記事を紹介します。

専門職外国人日本を素通り 在留資格取得、ピークの半分以下に(日本経済新聞11月22日付3面)

専門的な知識などを持って日本で働く外国人(高度人材)の増加にブレーキがかかっている。2009年に新たに在留資格を得たのは8905人と前年比で49%減少、ピークの07年の半分以下まで落ち込んだ。企業が海外での直接採用に軸足を移していることが背景。受け入れ体制の不備なども指摘され、もはや日本は「来る魅力のない国」になってしまったとの指摘も出ている。

 専門性が高い「技術」などの分野で日本で働くための在留資格を得た人数は、07年は2万2792件(人)と02年の2倍強まで膨らんだ後、08年から減少に転じた。09年は1万人を割り込み、02年の水準も下回った。厚生労働省幹部は「10年も同じ傾向だろう」とみる。

 経済産業省によると、高等教育を修了した人口に占める外国人の比率は日本はわずか0.7%。英国の16%や米国の13%と比べて見劣りする。日本側の受け入れ体制が不十分なことを問題視する声は多い。「英語の生活インフラが整っていない」「子弟の教育に適した学校がない」といった点だ。

 日本が成長していた時代はそれでも日本に滞在する外国人は多かったが、停滞色が年々強まっている昨今では日本に残るメリットを感じる外国人は少なくなっている。
 スイスのIMD(経営開発国際研究所)が発表した高度人材から見た労働市場の魅力度では、日本は「42位」。欧米諸国や英語圏のみならず、順位を上げている中国や韓国を大きく下回っている。
 優秀な外国人が日本を避ける状態が続けば、高度な知識の集積などで他国に後れを取り、長い目で見れば国の競争力の低下につながりかねない。 
(中略)

 産業界からは高度人材誘致へ優遇措置を政府に求める声も出てきた。「連続で10年の在留」となっている永住許可の条件の緩和や、外国人が帰国するときにもらえる年金の一時金が掛け金に見合わず、不利になっている現行制度を見直す案などが浮上している。
 アジアの新興国は外国人の単純労働者の流入は警戒する一方、高度人材の確保には積極的に動いている。シンガポールでは一定の学歴・資格を持ち、一定所得以上の人材は受け入れ人数の制限は設けていない。むしろ人材を獲得した企業向けの税制優遇措置などがある。 韓国では、2000年から重点産業に従事する高度人材に「ゴールドカード」を発給し、在留期間延長などの優遇策を講じる制度を開始。当初、電子商取引分野を対象に始まった同制度は、IT(情報技術)関連、環境エネルギーなど約10業種まで範囲が広がった。
 いずれも人材獲得だけでなく、定着にも力点を置いているのが特徴だ。
 英国やカナダで導入されているのが、外国人の学歴や年収、語学力などの能力を数値で評価する「ポイント制度」。ポイントを「高度人材」の認定や、永住権獲得に必要な期間の優遇などに活用している。
 日本も法務省が3月に、第4次出入国管理基本計画を公表。高度人材受け入れ拡大に向けてポイント制導入の検討を明記した。政府は高度人材の倍増目標を掲げた6月の新成長戦略で「海外人材の日本での集積を拡大する」としたが、具体策はこれからだ。

 都会が地方よりも活力があるのは、都会には能力のある人材が活躍の場を求めて続々と集まってくるからに他ならない。これは国についても同じだ。活力のある国には優秀な人材が集まり、優秀な人材の集まる国はさらに活力が増し、それが産業の発展や雇用の増加につながっていく。
 日本は元々外国人労働者の割合が少ない国ではあるが、優秀な外国人が日本にやってこなくなれば、それは経済活力の低下を経て雇用の減少にもつながる。
 それだけじゃなく、日本の優秀な労働者が外国に活躍の場を求めることさえもあるのが現状で、ノーベル賞を取った日本人が活動の拠点を外国においていることなどは嘆かわしい限りだ。
 グローバル化とは人材や企業が外にどんどん出ていくことではない、人材や資金や企業がどんどん国内に入ってくることが本当のグローバル化なのだ。真のグローバル化戦略が必要であり、政府にも本腰で取り組んでほしいものだ。

今日はこの辺で