欧州危機は東アジア経済にも影を落とす

久しぶりに経済の話題を取り上げます。

日本経済新聞2012年6月8日付7面より

東アジア生産網、欧州危機が波及、中国減速→韓台、半導体など輸出低迷。
 中国が利下げに踏み切り、景気下支えに動く中、韓国と台湾の輸出が3カ月連続で前年実績を割り、長引く欧州危機が中国だけでなく東アジアの生産網へ波及していることが鮮明になってきた。最終製品を組み立てる中国が生産を縮小し、半導体など中間財の対中供給が細る構図だ。欧州の景気減速が生産網を通じて連鎖し、韓台の内需にも影を落とす懸念がある。
 携帯電話やパソコンなどIT(情報技術)製品を中心に世界市場での存在感が高まった韓台の動向は「世界景気の先行指標」(米大手投資銀行)ともいわれる。韓台の変調は製造装置などの供給で依存関係を深める日本の製造業や株式相場にも広く影響を与える可能性が大きい。
 台湾の財政部(財政省)が7日発表した5月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比6・3%減だった。今年1月に2年3カ月ぶりに前年実績を割り込み、1〜5月累計では前年同期比5・0%減。韓国も5月は前年同月比0・4%減と、米金融危機の2009年以来となる3カ月連続のマイナスとなった。
 主因は最大の輸出先である中国向けの落ち込みだ。台湾は輸出総額の約4割を占める中国大陸・香港向けが5月に同10・0%減。韓国も輸出の4分の1を占める中国向けが5月(20日までの速報値)に同10・3%減と4月に比べ低下幅が約3倍に拡大した。
 東アジアではIT分野を中心に韓国や台湾などが中国に部品や材料の中間財を供給。中国で組み立てて最終製品に仕上げ、世界に出荷する供給網(サプライチェーン)が構築されている。
 5月の輸出を品目別でみると、台湾では半導体を含む電子製品が同2・5%減、液晶パネルなど光学器材が同12・1%減った。韓国もプラスチックなどの材料となる石油製品が同30・6%減、自動車部品が同15・9%減ったのが目立った。
 欧州への中国からの輸出急減が生産網をさかのぼる形で韓台にも波及した形だ。韓台の欧州向け輸出は既に減少しているが、対中輸出の落ち込みがそれに追い打ちをかけている。
 韓台は国内・域内総生産(GDP)対比で見た輸出への依存が大きく、企業業績の低迷などを通じて景気の足を引っ張る要因になるのが確実。当局や関連企業は警戒を強めている。
(後略)

日本や韓台で生産された高機能部品を中国やASEANで組み立て最終製品として欧米諸国に輸出する貿易のことを三角貿易と言うことは、先日の講義でも述べましたが、そのことに関係する記事です。欧州の需要減→中国の欧州向け最終財輸出減→韓台の中国向け部品・中間財の輸出減という連鎖構造です。もちろん、この連鎖は日本のアジア向け輸出にもつながっていくでしょう。

今日はこの辺で