日中韓投資協定の合意成立

FTA/EPAと投資協定で述べていた日中間投資協定が先月合意に達した。

日本経済新聞3月23日付3面より

日中韓投資協定で合意、日本企業、技術流出歯止め
日本、中国、韓国が投資協定の実質合意にこぎつけた。日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉入りに向けて前進するだけでなく、中国で活動する日本企業にとってのメリットも大きい。
 投資協定はお互いの国の企業の投資をどう守るかを定めた約束のこと。3カ国は今後、細部を詰めて署名する。各国の国会などでの批准手続きが終われば発効する。
(中略)
今回の協定の最大のポイントは不利益を受けた日本企業が中国政府を国際機関に訴えやすくなること。現地企業と比べ著しく差別的な待遇を受けた場合や、事業に行政が恣意的に介入してきた場合、規制や法令が頻繁に変更された場合などは中国政府を提訴できる。経済産業省の担当者は「実際に訴えなくても、現地当局などとの交渉に効果がある」と話す。
 日本企業が工場をつくる際、中国政府が技術を移転するよう求めることも禁止される。知的財産の保護も拡充する。

TPPの議論では、農業と製造業の貿易自由化が中心になって取り上げられるが、企業活動のグローバリゼーションが進展している現在では、投資協定は貿易自由化に匹敵するくらい重要な対外交渉となっている。
通常のFTA(自由貿易協定)の交渉では、貿易自由化と投資自由化を同時に交渉することが多い。TPPも貿易自由化と投資自由化がともに交渉のテーブルに載っている。しかし、貿易自由化と投資自由化を別々に交渉することもある。今回の日中間の交渉では、貿易自由化の前に、投資自由化について交渉の進展があったということだ。

これからの日本企業にとっての中国ビジネスの拡大を考えると、中国での権益を守るための投資協定は非常に大きな意義を持つ。

ただし、この投資協定の合意内容はまだ完ぺきなものではないようだ。

日本経済新聞3月27日付2面より

核心部分を先送りした日中韓投資協定(社説)

問題は協定の中身である。日本にとって投資協定の最大の目的は、中国に進出する企業の利益を守り、企業が安心して投資できるようにすることだ。今回の合意では、そのための効力は不十分だ。
 日本の産業界は、中国の当局が中国内で中国企業と日本企業を差別せず、平等に扱うよう求めてきた。合意では、現地工場の建設や合弁企業の設立など投資を実施した後は無差別だが、投資前の段階では平等が保証されていない。
 対中進出する企業の悩みは、投資を実現するまでの道のりだ。中国側から事業の許認可を得るために、不利な条件をのまされ、不透明な審査や手続きに泣き寝入りする例が後を絶たない。

 外資規制も協定の対象外となった。これでは自動車の合弁企業の出資比率で中国側が51%以上を保有して経営権を握るなど、中国独自の投資規則が残ってしまう。
 日本国内には、3カ国間の協定とすることで日韓が歩調を合わせて中国に働きかけ、高い水準の協定を実現する期待もあった。
 だが韓国はこうした日本との協調路線とは別に、単独で中国との対話を深めている。1月の中韓首脳会談では「中韓2国間FTAの早期締結」で一致。今回の合意とほぼ同等の投資協定も既に約4年前に中国と2国間で結んでいる。
 新協定は、投資を認める見返りに中国側が企業に技術移転を要求することを禁じるほか、知的財産権の保護強化なども盛り込んだ。これらは日本にとって前進だが、先進国では常識の「内外無差別」原則を、投資前にも適用するという核心部分は先送りとなった。

今回の投資協定は合意であり、この後さらに詳細を詰めて"署名"にいたり、各国で"批准"された後に"発効"する。なので、詳細を詰める段階で、内外無差別原則の拡大を目指す必要があると言える。
また、今後日中韓FTAの交渉が進むことを考えると、この交渉でも、内外無差別原則の実現のチャンスがあると思われる。

関連資料はここで見れます。
外務省:日中韓投資取決めのあり得べき形態に関する非公式共同研究報告書
経済産業省:日中韓自由貿易協定(FTA)産官学共同研究報告書(第5節で投資について取り上げられてます)

今日はこの辺で