産業政策は中小企業をターゲットにするべき

VOXより、Industrial policy works for smaller firmsを読みました。

(要旨)
The Great Recession has beckoned the ominous return of protectionism. While not condoning such policies, this column argues that if governments must provide investment subsidies to domestic firms, there is a much larger bang for their buck if they target small businesses rather than larger ones. Cash-strapped governments should take note.

(訳)
大不況(The Great Recession)によって、保護主義への回帰の兆しが見られるようになってきている。そのような政策を実際に行うことは許されないことだが、このコラムでは、もし政府が国内企業に設備投資に補助金を与えなければならないとするなら、大企業よりもむしろ中小企業を対称にした方が補助金支出に見合う効果を得ることができることを論じていく。予算に限りのある政府は、このことを肝に銘じておいた方がよい。

リーマンショック以降の不況以降、国内企業を支援するための産業政策の必要性が、様々なところで唱えられている。
しかし、このような産業政策が実際に有効に機能しているかどうかを、データを使って精密に分析した研究はあまりない。

このコラムでは、CEPR(Centre for Economic Policy Research)*1のVan Reenen氏らの研究について紹介されている。

彼らが分析したのは、英国で行われている地域別選別援助(RSA:Regional Selective Assistance)と呼ばれる政策が雇用などに及ぼした影響についてである。
この制度は、英国で40年以上続けられている制度であり、他国でも類似したものが多くある。その内容は、英国内で失業率が高く経済が低迷している地域(援助地域)で地域経済活性化のための投資を行う企業に補助金を支給するものである。地域経済活性化のための投資というのは、1)経済的に自助独立の可能性が大きい、2)援助地域で、雇用を創出あるいは維持できる、3)地域および国家の経済に貢献できる、4)プロジェクトの実施に援助が不可欠であるなどの条件が満たされるなどの条件が満たされるものである*2

彼らの分析結果は次のようなものだ。

  • RSAによって10万人ほどの雇用が創出されており、1人当たりの雇用創出にかかるコストは6300ドル(51万円ほど)であり、それほど高くはない。
  • 小企業(従業員150名以下の企業)への補助金の方が、投資と雇用の創出効果は大きくなる。大企業への効果は実質的にはゼロ。

このように、彼らの分析では、地域経済活性化のための補助金政策がある程度有効であり、大企業への補助金よりも小企業に対する補助金の方がその効果は大きいことを示されている。
大企業への補助金が効果がなく、小企業に対する補助金の効果が高い理由としては、大企業よりも小企業の方が資金制約が大きいということが挙げられている。

日本も、震災からの復興のために復興特区を作り、企業を誘致しようとしているが、その参考になるんじゃないかと思います。

今日はこの辺で

*1:欧州屈指の政策シンクタンク

*2:ここを参照