国際収支発展段階説について(4)

ここここここここからの続きです。

(4)未成熟債権国
前回書いたように、経済発展の初期段階の国は、国内開発のための投資のための資金需要が大きいが、国内貯蓄が少ないために、国内投資のための資金を外国に依存する。このため、資本収支は黒字となり、債務国となる。その後、国内生産力が高まると、貿易収支が黒字となり、それが所得収支の赤字を上回るほど大きくなると、経常収支が黒字となる。経常収支が黒字化すると、資本収支は赤字化するために、対外純債務は減少することになる。
経常収支の黒字が続くと、対外純債務はどんどん少なくなり、最終的に対外純債務はなくなり、対外純資産が発生することになる。このようにして、この国は債権国へと転ずる。
対外純資産を保有することになると、対外資産からの金利・配当の受け取りが、対外負債への金利・配当の支払いを上回るようになるために、所得収支が黒字化することになる。
まとめると、未成熟債権国は、貿易収支と所得収支が黒字となり、それゆえに経常収支は黒字となる。資本収支は赤字となり、対外純債権が増えていく ことになります。

(5)成熟債権国
大きな貿易黒字を保有し、対外純資産を積み重ねている未成熟債権国の状態は、一国の最盛期とも呼べるものだ。
しかし、このような状態が営々に続くわけでもない。経済発展が進むほど、国内所得は増えていくが、これは国内賃金が高くなることを意味しており、国際競争力の低下へとつながることになる。
また、国内賃金の上昇を生産性の上昇によって抑え込めたとしても、大きな経常収支黒字は自国通貨の増価につながり、やはり国際競争力の低下へとつながっていくことになる。
このため、貿易収支の黒字は経済発展が進むにつれ縮小していくことになり、やがて貿易収支が赤字に転ずる。この状態を成熟債権国という。
しかし、未成熟債権国のときに対外純資産を積み重ねているため、所得収支の黒字は大きくなっており、経常収支の黒字は維持している。このため、対外純資産はまだ増加している状態である。
まとめると、成熟債権国は貿易収支は赤字、所得収支は黒字だが、それを合計した経常収支は黒字となる。資本収支は赤字であり、対外純資産は増加している。

(6)債権取崩国
貿易収支の赤字が大きくなると、所得収支の黒字を上回るようになり、経常収支が赤字化するようになる。
経常収支が赤字化すると、資本収支は黒字化することになるため、対外投資よりも対外借入が上回ることになる。このため、対外純資産は減少していくことになる。
これは、国内の生産力が落ち、稼ぐ力がなくなった国がこれまで積み重ねた対外資産を取り崩しながら国内消費を維持している状態であり、これより債権取崩国という名前となる。
対外純資産が減少していくと、最終的にゼロとなり、再び債務国へと転換することになる。
まとめると、債権取崩国は貿易収支赤字、所得収支黒字であり、前者が後者を上回るために経常収支は赤字化する。資本収支は黒字となり、対外純資産は減少することになる。

このように、国際収支発展段階説は、経済発展の変遷とともに国際収支の黒字・赤字の構成が変化するというものである。

今日はこの辺で