国際収支発展段階説について(1)

昨日書いた黒字が消えるでは、去年の日本の貿易収支が赤字化したことを受けて、経常収支黒字を維持することができるのかということが新聞で取り上げられていることを紹介した。

このような議論の際によく用いられているのが1月27日付の日本経済新聞の記事でも紹介されていた国際収支発展段階説だ。この国際収支発展段階説は、クローサーキンドルバーガーといった学者らによって唱えられた説であり、経済発展に応じて国際収支の黒字・赤字項目の構成が変わっていくというものです。

下図は2002年の通商白書で示された国際収支発展段階説に基づく国際収支の変化の概念図だ。

国際収支発展段階説では、経済発展を(1)未成熟債務国(2)成熟債務国(3)債務返済国(4)未成熟債権国(5)成熟債権国(6)債権取崩国の6段階に分類している。
ここで言う債務国とは対外純債務を抱えている国であり、債権国とは対外純資産を保有している国である。対外純債務=対外債務−対外資産、対外純資産=対外資産−対外債務であり、負の対外純資産=対外純債務と考えてもらいたい。対外債務とは外国からの借り入れによって積み重ねられた債務(借金)であり、対外資産は対外投資によって積み重ねられた資産である。

現段階で日本は(4)の未成熟債権国だが、今回日本の貿易収支が赤字化したことによって、日本は(5)の成熟債権国へと移行するのではないかと考えられているというわけだ。

この国際収支発展段階説は、長期的な経済の動向を考える上で非常に有効な概念であり、理解しやすい概念でもあるので、これから数回にわたって紹介していきたいと思います。

今日はこの辺で