黒字が消える
1月26〜28日付の日本経済新聞1面で、「黒字が消える」という連載記事が掲載されていた。
これは、2011年における日本の貿易収支が赤字化したことを受けて書かれたものだ。
簡単なポイントをまとめると次のようになる。
- 2011年に貿易収支が赤字化した主因は、東日本大震災によるサプライチェーンの寸断や欧州債務危機に伴う輸出の減少
- 貿易赤字化の構造的要因は、高い人件費や法人税、円高、電気料金の上昇による輸出競争力の低下、それを避けるための国外生産の増加に伴う逆輸入の増加と、原子力発電の停止に伴う燃料輸入の増加と原油高に伴う輸入価格の高止まり。
- 経常収支が赤字化すると、日本国債の消化を海外マネーに依存することになるため安定消化に支障をきたす
- 経常収支が赤字にならないようにするためには、貿易収支の赤字を所得収支の黒字によってカバーしなければならない。
- 所得収支の黒字を増やすためには、国際投資からの収益の増加が必要だが、日本の対外直接投資の規模とその収益性は他の欧米諸国に比べるとまだまだ低い。
日本の貿易収支の赤字化は震災や世界不況などの短期的な要因ではなく、長期的な構造問題だ。
下の図が示すように、日本の経常収支黒字の規模は最近では減少しているものの安定している。しかし、貿易収支黒字の規模は90年代後半以降明らかに減少傾向にある。今回の貿易収支の赤字化もその流れの中で起こっていると考えるべきである。
貿易収支黒字が縮小している中、経常収支黒字が安定しているのは、所得収支黒字が拡大しているからだ。所得収支黒字の中心は海外投資からの利子や配当収入であり、今後所得収支黒字を維持するためにはこれまで以上の対外投資とその収益性の向上が必要となるというわけだ。
今日はこの辺で