社会保障における世代間格差
先日書いた"少子高齢化がもたらす政策課題"で、少子高齢化が進むと世代間格差が問題になると書きましたが、そのことに関する論文を見つけたので紹介しておきます。
鈴木-増島-白石-森重(2012) 「社会保障を通じた世代別の受益と負担」ESRI(内閣府経済社会総合研究所)Discussion Paper Series No.281
(要旨)
年金、医療、介護の3 分野に関する社会保障モデルを構築した上で、社会保障の長期推計を行い、さらに生年別の受益と負担の構造を検討した。
本研究で構築したモデルは、鈴木(2006)を発展させたものであるが、年金モデルでは、厚生労働省が平成21 年財政検証に際して公開した計算手法とデータおよび将来の経済前提を取り込み、医療モデル、介護モデルでは現行制度と最新データを反映させた。各モデルとも政府による推計結果(年金は2105 年まで、医療、介護は2025 年まで)をほぼ再現している。医療、介護では長期推計を試みており、医療給付費及び介護給付費の対名目GDP比率は、2010 年から2100 年にかけて、いずれも2 倍近くの規模に拡大する。
現役期に保険料を負担し引退後にサービスを受益するという構造は、年金、医療、介護の3 制度に共通しているが、受益と負担の関係は世代ごとに異なる。社会保障からの純受益が生涯収入に占める割合として定義される生涯純受給率を生年別にみると、1950 年生れ1.0%、1960 年生れ▲5.3%、1970 年生れ▲7.8%、1980 年生れ▲9.8%、1990 年生れ▲11.5%、2000 年生れ▲12.4%、2010 年生れ▲13.0%と生年が下るにつれて支払い超過の傾向にある。このように、社会保障を通じた世代間不均衡は無視できない大きさとなっている。
下図は、論文内にあった生年別の生涯受給率(社会保障からの純受益が生涯収入に占める割合)の推移です。
これを見ると、日本の社会保障がいかに若年層にとって不公平なものになっているかわかりますね。
今日はこの辺で