リーマンショック以後の保護貿易的措置が世界経済に与えた影響

VOXより、Crisis protectionism: The observed trade impactを読みました。

リーマンショックをきっかけとする世界金融危機は100年に一度の経済危機と言われ、1929年の大恐慌にも匹敵すると言われています。1929年の大恐慌時には、米国や欧州で保護貿易措置が続々と実施され、そのことが世界貿易を縮小させ、不況を深刻化させてきました。
そのため、リーマンショック直後に開かれたG20では、世界各国は自由貿易を堅持することが宣言され、保護貿易措置の実施は厳しく戒められてきました。そのおかげで、1929年の大恐慌時ほど強力な保護貿易措置がとられることは防がれました。
しかし、保護貿易措置が全くとられなかったわけではなく、WTOの調査によると、リーマンショック以降、世界の国々で合計314個の保護貿易措置が実施されています。その中には、国産品の購入を義務付ける政策(バイアメリカン法など)や、国内企業の救済措置など、露骨な輸入関税などの貿易障壁の引き上げとは異なる実質的な保護貿易政策も含まれています。リーマンショック以降の保護貿易措置については、みずほ政策インサイトで詳しく記されています(ここここここここを参照)。

 今回読んだブログ記事では、リーマンショック以降とられた314の保護貿易措置のうち120の保護貿易措置について、これらの政策が世界貿易に与えた影響がIMFの研究者であるChristian HennとBrad McDonaldによって分析されています。その結果、これらの保護貿易措置は、政策の対象となった製品について少なくとも5〜9%の減少をもたらしたことが示されています。
さらに、保護貿易措置によって世界貿易全体の0.25%である350億ドルが影響を受けたと分析されています。この数字は、それほど大きなものではないが、ドーハラウンドで世界全体の関税が1%低下したときの世界貿易の増加と同じほどの数字であり、決して小さなものではないとブログ記事には記されています。また、分析で取り上げられた保護貿易措置は全体の3分の1程度であり、保護貿易措置によって受けた世界貿易への影響は実際にはもっと大きいだろうとも指摘しています。

今日はこの辺で