大学は地域の技術開発に貢献するのか?
VOXよりThe impact of university research on corporate patentingを読みました。
大学の研究活動は、基礎研究の出版、大学による特許の取得、大学からのスピンオフ、インキュベーターやサイエンスパークの設立、企業との共同研究、教育訓練活動などを通じて、地元企業の研究開発活動を促進することが知られています。このため、国内の研究開発活動を促進するための政策として、政府による大学の研究に対する公的支援が挙げられます。
大学の研究に対する公的支援については、財源に限りがあることからトップクラスの大学に絞って行うのか、それとも多くの地域の大学に広く分散して供給するべきかについては議論が分かれるところです。
もし、大学の研究が地域的な近接性に限らず広く国内の多くの民間企業の研究開発活動に影響を及ぼすのであれば、政府はいくつかの世界トップクラスの大学に資金を集中して供給するべきだと考えられますが、大学の研究の民間企業の研究開発活動に対する影響に地理的制約があるのであれば、少数の企業に資金を集中することは必ずしも望ましいものではないと言えます。
このBlog記事では、このことを受けて、イギリスを117の地域に分け、大学の機械工学と生物学の研究活動と企業の特許取得との関係を分析した。その結果、大学の研究活動は、同地域の中小企業の特許取得数と相関があり、大学の研究活動の水準が上がるほどその関係は強くなることが明らかにされた。ただし、大企業についてはこの関係は成立しなかった。これは、大企業は研究リソースのネットワークを国内・国外と広範囲に持っていて、地域の大学の研究に対する依存度は低いものだと考えられる。
このような結果から、政府が少数の大学に集中的に研究資金を配分する政策は、地方の中小企業の研究開発活動に大きく影響を及ぼすものだと考えられる。
日本でも、地域経済の活性化のために産学連携を進めるべきだという声が挙げられているが、そのためにはこのような大学の研究と地域の研究開発に関する実証研究による検証をもっと進めなければいけないだろう。
今日はこの辺で