シンガポールはアジアのR&D活動の中心になれるか

9月10日付日本経済新聞6面より

シンガポールに研究・開発拠点 政府、誘致へ減税拡充 化学・医療など幅広く

世界の有力企業がシンガポールに相次ぎ研究・開発(R&D)拠点を新設している。高成長が期待されるアジア新興国向け製品の技術開発に力を入れる狙いで、化学や健康・医療、IT(情報技術)など幅広い業種にまたがる動きだ。シンガポール政府はビジネス拠点としての競争力を高めるためR&D関連の支援策を拡充している。今後、同国がアジアでの技術開発の足場として一段と存在感を高めそうだ。

記事内では、ドイツの化学大手バイエルや自動車部品大手ボッシュアメリカの製薬大手アボット・ラボラトリーズやIT大手のヒューレット・パッカード、日本の日本電工東レなど、世界の多国籍企業が続々とシンガポールにR&D拠点を設立していることが書かれている。

シンガポールにR&D拠点を設立する目的は、成長市場で今後競争が激しくなる中国やインドも含めたアジア市場での競争力強化だ。市場需要に近いところで商品開発を行うことで需要の変化に迅速に対応できるようになることがねらいだ。

このようなシンガポールでのR&D拠点設立の増加は、シンガポール政府の政策にも原因がある。シンガポール政府は従来、企業のR&D支出の150%を法人税の課税所得から控除していたが、2010年度からは上限付きで250%拡大するとしており、さらには民間企業のR&Dを支援する「国家研究基金」への拠出も増やしている。

元々、シンガポールはアジアNIEsの一員として労働集約産業の輸出から成長した国だが、人口制約と労働賃金の上昇によって、産業の高付加価値化をすすめていかなければならなかった。多国籍企業のR&D拠点をどんどん呼び寄せアジアのR&D活動の中心となることで高付加価値経済を維持しようということなのだろう。

今日はこの辺で