家計の行動:所得・価格の変化と消費(10)ギッフェン財

価格の変化に伴う需要の変化(価格効果)は、相対価格の変化に伴う効用水準を得るための支出を最小化するための需要の変化である代替効果と、購買力の変化に伴う需要の変化である所得効果に分解さることをこれまで書いてきました。

代替効果は価格が上昇するときには需要を減少するように、価格が低下するときには需要を増加するように働きます。一方、所得効果はその財が上級財か下級財かによって異なってきます。価格の上昇は購買力(実質所得)を低下させます。このため、財が上級財のときには所得効果は需要を減少させるように、下級財のときには需要を増加させるように働きます。価格が低下するときには反対です。これをまとめると下の表のようになります。

これより、価格が上昇するとき、その財が上級財であれば代替効果も所得効果も需要を減少させるように働くため、財の需要は減少する事になります。

一方、その財が下級財であるとき、代替効果は需要を減少させるように働くのに対し、所得効果は需要を増加させるように働くため、価格効果は代替効果と所得効果の大小関係によって決まることになります。
このため、所得効果が代替効果を上回るときには、価格の上昇によって財の需要が増加するという奇妙な現象が起こります。そのことを示したものが下図です。

上図で、価格p*のときにX財の需要が点Aで示されるx*となります。価格がp**に上昇するとき、代替効果は点Aから点Cへの変化で示されます。このとき、X財の需要はx*からx+に減少する事になります。一方、X財は下級財であるために、所得効果は価格の上昇に伴う購買力の変化に伴ってx+からx**に増加する事になります。このとき、代替効果(x*‐x+の需要減少)よりも、所得効果(x**‐x+の需要増加)の方が大きくなるため、価格の上昇によってX財の需要はx**‐x*増加する事になります。このような、価格が上昇する事によって授与がかえって増加する財をギッフェン財といいます。

このギッフェン財という財は、負の所得効果が非常に大きい程度の強い下級財があてはまります。実際の経済においてこのようなギッフェン財と呼べるものはほとんど存在していませんが、所得効果と代替効果が反対方向で所得効果が強いときには通常の価格の変化に伴う需要の変化と異なる事柄が発生する事は貯蓄や労働供給の決定においてよく見られるのでしっかりと理解しておきましょう。

今日はこの辺で