家計の行動:所得・価格の変化と消費(7)代替効果

前回は、支出最小化問題について書きました。ある一定の効用水準を得るために必要な最小支出は、限界代替率と相対価格の等しいこところで決まります。このことは、財価格が変化すると、支出を最小とする消費の組み合わせも変化することを示しています。

代替効果とは、このような効用水準を最小支出で得ようとする消費者の行動を反映したものです。

具体例を使いながら説明しましょう。
家計の予算が1000円、X財とY財の価格がともに10円とします。このとき、家計の効用を最大にする消費量が下図の点Aが示すようにX財とY財ともに50単位ずつだとします。このとき、消費者の支出額は(X財への支出額=10円×50単位=500円)+(Y財への支出額=10円×50単位=500円)=1000円となります。

予算制約線の傾きは−px/pyより−1となります。点Aの消費によって家計はU1の効用水準を得ています。

さて、この状態からX財の価格が10円から20円に上昇したとします。このとき、点Aと同じ消費を実現しようとするときに必要な家計の支出額は(X財への支出額=20円×50単位=1000円)+(Y財への支出額=10円×50単位=500円)=1500円と価格変化前より増加することになります。これはX財の価格が上昇したからにほかありません。
X財の価格が20円に上昇した時に点Aを通る等支出線は下図の黒破線のように引くことができます。この等支出線の傾きは−px/pyより−2となり、1500円の支出に相当するものとなります。

しかし、上図を見るとわかるように、効用水準U1を得るために必要な支出額は購入する財の組み合わせを変更することによって減少させることができます。財の購入量の変更によってU1の効用水準を得るために必要な支出を最小にしたものが下図になります。

上図では傾き−2の等支出線と効用水準U1を与える無差別曲線が点Bで接しています。点Bにおける家計の支出額は(X財への支出額=20円×30単位=600円)+(Y財への支出額=10円×80単位=800円)=1400円となります。これより、点Aから点Bに消費の組み合わせを変えることによって家計は効用水準U1を得るために必要な支出額を少なくすることができるのです。点Bでは等支出線と無差別曲線が接していますから、点Bが効用水準U1を得るための支出を最小化する消費の組み合わせということになります。

点Aから点Bへと消費の組み合わせを変更するということは、価格の高くなったX財の消費量を減少させる一方で、相対的に価格が安くなったY財の消費を増加させることを意味します。このように、財の価格が変化した時に相対価格の高くなった財の消費量を減少させる一方で、相対価格の安くなった財の消費量を増やすことによって、これまで得ていた効用水準を得るための支出額を減少させようと消費の組み合わせを変えることが代替効果となります。

つまり、代替効果とは価格変化前に得ていた効用水準を得るための支出額を最小にするための消費の変化を示すものなのです。

今日はこの辺で