家計の行動:所得・価格の変化と消費(1)予算制約線と実質所得

これまで、消費者が与えられた予算と価格の下で、自らの効用を最大にする消費量をどのように決定するのかについて書いてきました。

今回からは、所得(予算)や財の価格が変化した時に消費者の効用を最大にする消費量がどのように変化するのかについて書いていきます。

所得や価格が変化するときには予算制約線の位置が変化することになります。財の消費量の組み合わせとそれによって消費者の得る効用水準との関係を示した無差別曲線は、所得や価格の影響を受けないのでその位置が変わることはありません。

所得や価格の変化に対応した予算制約線の位置の変化を知るためには、予算制約線の傾きと縦軸、横軸との切片の値を知る必要があります。
チョコの価格をpx、スナックの価格をpy、消費者の所得(予算)をMとするとき、予算制約線は次のようになります*1

予算制約線の傾きは、スナックに対するチョコの相対価格(px/py)にマイナスをつけたものとなります。

一方、横軸と予算制約線の切片の値は(M/px)となります。これは、もし消費者が予算のすべてをチョコの購入に費やした時に購入可能なチョコの量を示しています。これをチョコで測った実質所得と言います。

実質所得とはその予算で購入可能な財の数量で予算の大きさを表すものであり、消費者の購買力を示すものです。例えば、予算が1000円でチョコの価格が1個20円の時、予算をすべて使い切る時に購入可能なチョコの量は1000/20=50個になりますが、このとき消費者はチョコ50個分の実質所得を持つというのです、すなわち消費者はチョコ50個変えるだけの予算を持っているということです。

チョコの価格が変動するとこの実質所得は変化します。例えば、チョコの価格が1個50円に値上がりする時、消費者の手持ちの予算は1000円と変わらなくても、チョコで測った実質所得は1000/50=20個となります。このとき、消費者の実質所得は減少することになります。手持ちの予算が変化しなくても、価格が上昇すると消費者の購買力は低下することになるからです。

このように、消費者の購買力を示す実質所得は所得(予算)の金額と価格水準によって影響を受けます。1000円という貨幣単位で示された所得のことを実質所得に対して名目所得と言います。

同様に、予算制約線と縦軸との切片の値(M/py)はスナックで測った実質所得となります。

このように、予算制約線の傾きは相対価格で、予算制約線の切片の値の大きさは実質所得によって決まります。

*1:予算制約線の導出についてはここを参照