家計の行動:2財のケース(14)効用最大化への調整過程

昨日、2財のケースの効用最大化条件は限界代替率と相対価格が等しくなることだと書きました。

このような効用最大化条件は、消費者がどのように消費量を調整するかによって効用を最大にするのかという過程を考えることによって理解することができます。

そのために、まず1財の消費における(純)効用の最大化への調整過程を思い出しましょう。

ここでも書いたように、1財のケースでは消費者は限界効用と市場価格を比較して消費量を調整します。限界効用は消費を1単位増やした時の効用の増加を市場価格は消費を1単位増やす時のコストを示しています。
限界効用が市場価格を上回る時には消費者は消費を1単位増やすことによってコストを上回る効用を得ることができるため、消費量を増やし、市場価格が限界効用を上回る時には消費を増やしてもコストを下回る効用しかえることができないので消費量を減少させます。
このような調整は限界効用と市場価格が等しくなるところまで続き、そのため効用最大化条件は限界効用と市場価格が等しくなるということになるのです。

2財のケースもこの1財のケースと同様の調整過程が働きます。

予算の範囲内で効用を最大にするためには消費者は必ず予算を使い切らなければなりません。予算を使い切らない消費の組み合わせから考えると、使わなかった予算を使ってチョコかスナックを購入することによって効用を増やすことができるからです。

予算制約線は消費者が予算を使い切った時に購入することが可能な財の組み合わせを示しているので、消費者は効用を最大にするためには予算制約線上の点でどの点が自らにとって望ましいのかを考えることになります。

ここでも書いたように、予算を使い切った状態でどちらか一方の財の消費量を増やそうとするともう一方の消費量を減らさなければなりません。これをトレードオフといいます。
以前出した例題に戻り、スナックの価格を10円、チョコの価格を20円にすると、予算を使い切った時にチョコの消費量を1単位増やすためにはスナックの消費を2単位減少させなければなりません。
このようなチョコの消費量を1単位増やすためあきらめなければならないスナックの消費量のことをスナックで測ったチョコの購入費用といいます。

一方、ここでも書いてきたように、(スナックで測ったチョコの)限界代替率とはチョコ1単位と何単位のスナックの消費の価値が等しくなるかを意味しており、これは消費にとってのスナックで測ったチョコの価値となります。

この二つを比較して、(スナックで測った)チョコの価値が(スナックで測った)チョコの購入費用を上回る時、消費者はスナックの消費を減らしてチョコの消費を増やし、反対に(スナックで測った)チョコの費用が(スナックで測った)チョコの価値を上回る時にはチョコの消費を減らしスナックの消費を増やそうとするでしょう。

このことを図1を使って説明していきます。

消費者が当初保有しているチョコとスナックの組み合わせが点Aだったとします。
点Aでは予算制約線の傾きより無差別曲線の接線の傾きの方が大きいため、限界代替率がチョコの相対価格を上回っています。

スナックの価格が10円、チョコの価格が20円である時、チョコの消費を1単位増やそうとすると2単位のスナックの消費をあきらめなければならなくなるため、スナックで測ったチョコの購入費用は2単位となります。このため、点Aからチョコの消費量を1単位増やす場合、消費者の保有する財の組み合わせは点イとなります。

一方、点Aからチョコの消費量が1単位増えて、スナックの消費量が3単位減少した消費の組み合わせを示す点ウは点Aと同じ無差別曲線上の点となることから、点Aを保有する消費者にとっての限界代替率(スナックで測ったチョコの価値)は3単位となります。

点イと点ウを比べると、消費の組み合わせが点Aから点イに移ることによって消費者の効用が上昇することがわかります。

点Aからチョコの消費が1単位増えて点アとなると効用が上昇しますが、そこからスナックの消費量が3単位減少すると、効用水準は点Aの時の水準に戻ります。しかし、両財の価格を考えると、消費者はチョコの消費を1単位増やすためにスナックの消費を2単位しかあきらめなくてもいいわけだから、点イは点Aよりも効用水準が高くなることになるのです。

このように、チョコの限界代替率(スナックで測った価値)が相対価格(スナックで測った購入費用)を上回る時、消費者はチョコの消費を増やしスナックの減らすことによって効用水準を上昇させることができるのです。

次に、相対価格が限界代替率を上回るケースを図2を用いて考えます。

点Cにおいては無差別曲線の傾きより予算制約線の傾きの方が大きいので相対価格が限界代替率を上回っています。

点Cからチョコの消費を1単位減少させるとスナックの消費は2単位増加するため、消費者の消費の組み合わせは点カとなります。

一方、点Cからチョコの消費量が1単位減少して、スナックの消費量が0.5単位増加した消費の組み合わせを示す点オは点Cと同じ無差別曲線上の点となることから、点Cを保有する消費者にとっての限界代替率(スナックで測ったチョコの価値)は0.5単位となります。

点オと点カを比べる時、消費者はチョコの消費を1単位減らしてもスナックの消費を0.5単位増やすと消費者の効用が元の水準に戻るのに対し、チョコの消費を1単位減らすことによってスナックの消費は2単位増加させることができるため点Cから点カへと消費の組み合わせを変えることによって消費者の効用は上昇することになります。

このため、相対価格が限界代替率を上回る時には消費者はチョコの消費を減らしスナックの消費を増加させることによって効用水準を上昇することができるのです。

以上のことをまとめたのが図3です。

図3が示すように、スナックの消費量が大きくチョコの消費が少ない時には限界代替率が相対価格を上回るために、消費者はスナックの消費を減らしチョコの消費を増やすことによって効用を上昇させることができる一方で、チョコの消費量が大きくスナックの消費が少ない時には相対価格が限界代替率を上回るために、消費者はチョコの消費を減らしスナックの消費を増やすことによって効用を上昇させることができることがわかります。このような調整をしていくと、消費者の効用を最大にする消費の組み合わせは限界代替率と相対価格が等しくなるところになり、それが無差別曲線と予算制約線が接している効用最大化点となるので。

今日はこの辺で