家計の行動:1財のケース(5)(純)効用最大化条件

昨日導出した限界効用曲線を用いて、3日前の記事で述べた消費者の消費量の決定を考えてみましょう。

図1は、昨日の図3で示された限界効用と消費量の関係を示した棒グラフです。
限界効用とは、消費量を1単位増やしたときの効用(満足度)の増加分を示しており、消費者にとっての財の価値を示しています。

グラフには、スナック菓子の価格である120円の値に水平な赤い直線が引かれています。この市場価格において水平な赤い直線と限界効用を示す棒グラフを用いて、消費者がどのように消費量を決定するかを考えることができます。

まず、消費者が手元にスナック菓子を保有しておらず消費量がゼロであるとき、消費者にとってスナック菓子の保有を1単位増加させることによる効用の増加分、すなわち限界効用はグラフが示すように200円分となります。これに対し、スナック菓子の価格は120円ですから、消費者はスナック菓子の消費量を1単位増加することによって、支払った価格に比べて200-120=80円分多い効用を得ることができます。このため、スナック菓子の買い物は消費者にとって80円分お得な買い物となります。この80円分のお得はグラフ内のバツ印で示されています。

次に、消費量を1単位から2単位に増やす時、消費者の効用は160円分増えるのに対し、支払う価格は120円なので、この買い物は消費者にとって160-120=40円分お得な買い物となります。この40円分のお得もグラフ内のバツ印で示されています。

このように、消費者はスナック菓子の購入を1個、2個と増やすことによって80円分のお得と40円分のお得、合計120円分のお得感を味わうことになります。

そして、消費量を2単位から3単位に増やすとき、効用が120円分増えるのに対し、支払った価格は120円なので、このとき消費者は得もしないし損もしない状態になります。このとき、消費者は消費してもしなくてもいいけど、ここでは消費することにしておきましょう。

さらに消費量を3単位から4単位に増やす時、支払う価格は120円ですが、効用は80円分しか増えません。このため、この買い物は40円分損な買い物となります。この40円分の損は緑線のバツ印で示されています。また、さらに消費量を4単位から5単位に増やす時、120円支払っても消費者の効用はたった40円分しか増えないので、この買い物は消費者にとって80円分損な買い物となります。80円分の損は緑線の大きなバツ印で表されています。

このように、消費量が4単位以上に増やしても、消費者にとっては支払価格以上の効用を得られない損な買い物しかできないので、消費者にとってはこんな買い物する必要がなくなります。このため、この消費者のスナック菓子の購入量は3単位となります。

(消費によって得た効用)−(購入のための支払金額=価格×市場価格)を純効用(支払金額以上に得た効用の値)とすると、消費量と純効用の関係は表1のように示されます。

これを見ると、消費量が2単位もしくは3単位のときに純効用が最大となり、それ以上消費を増やしても純効用は減少してしまうことがわかります。このように、限界効用と市場価格との関係を見ながら消費量を調整することによって、消費者は純効用を最大にする消費量を得ることができるのです。

同じことを限界効用曲線を使って考えましょう。

図は直線の限界効用曲線と市場価格pで水平な直線が描かれています。

消費量がx'やx''のときには、限界効用が市場価格を上回っているので消費量を増やすことによって純効用を増やすことができます。一方、消費量がx'''のように非常に大きい時には、限界効用よりも市場価格が上回るので、消費量を増やしても限界効用以上のお金を支払うことになり損をする(マイナスの純効用を得る)ことになります。

このため、消費者は限界効用が市場価格と等しくなるx*まで消費を増やしてそれ以上は消費を増やそうとしなくなります。なぜなら、消費量がx*を越えると市場価格が限界効用を上回ることになり消費量を増やす必要がなくなるからです。

このように、消費者は自らの限界効用と市場価格を比べながら消費量を決定することになります。そして、最終的に限界効用と市場価格が等しくなるところまで消費量を増やして、それ以上は消費を増やさなくなります。

このため、純効用を最大にするような消費量を求めるためには、消費者の限界効用と市場価格が等しくなるような消費量を導出すればよいということになります。この限界効用と市場価格が等しくなるという条件を(純)効用最大条件と呼びます。

(純)効用最大化条件 限界効用=市場価格

(純)効用最大化条件とは、(純)効用を最大にする消費量を導出するための条件であり、限界効用と市場価格が等しくなる消費量を見つけることによって(純)効用を最大にする消費量を見つけることができるということを意味しています。

今日はこの辺で