FTAの先行効果について

VOXより、TPP negotiations, anticipatory trade creation, and implications for European trade policyを読みました。

このブログ記事では、TPP(環太平洋連携協定)がEUに与える貿易転換効果について書かれたものだ。TPPによってこの地域内の貿易が促進されれば、EUからこれらの地域の輸出が、TPP域内の貿易によって切り替えられてしまうというのが貿易転換効果である。

TPPはまだ日本の交渉参加も正式決定しておらず、既存の参加国間の交渉もスムーズに進んでいるとは言えない状態で、成立するまでまだまだ時間がかかると思われるが、このブログ記事によって紹介されたドイツ開発研究所の研究員で北京大学客員教授ウルリッヒ・ヴォルツ氏らの研究では、FTAは実際に発効された後だけでなく、発効される前の段階でも交渉国間の貿易を促進させるという「先行効果」があることが明らかにされている。

氏らの研究では、東アジアでこれまで結ばれてきたFTAについて、交渉の段階に入った時点で交渉国間での貿易の増加するという「先行効果」が観察されている。
この先行効果は、多国間協定よりも二国間協定の方が顕著であり、二国間交渉については、交渉に入った段階で交渉国間の貿易が39gほど増加すると推計されている。

多国間協定については、二国間協定ほどはっきりとした先行効果は見られないが、これは二国間協定に比べて多国間協定の方が交渉過程が複雑かつ困難であるため、実際に成立するという見通しが立ちにくいためであり、交渉成立に関する信用が増すほど、FTAの先行効果は表れると考えられる。

ブログ記事では、この先行効果を考えるとEUはまだ交渉段階だからと油断することなく、今のうちにTPP参加国との貿易自由化交渉、およびWTOの多角的貿易交渉の推進に力を入れるべきだという主張がなされている。

今日はこの辺で