FTA/EPAと投資協定

12月11日付日本経済新聞朝刊1面より

日中韓、FTA交渉へ、来夏にも、投資協定は月内合意―日韓EPAも再開で調整。
日中韓3カ国が来夏にも自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を始める見通しとなった。近く作業を終える日中韓FTAに関する共同研究で交渉開始の方向を打ち出し、来春の日中韓首脳会談で正式に確認する。知的財産権の保護などを定める投資協定も月内に実質合意する。FTA交渉では日中韓の貿易・投資の促進に向けて、3カ国がどれだけ歩み寄れるかが焦点となる。
(中略)
日本は11月に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明した。政府はTPPをきっかけに「中韓が対日交渉に前向きになっている」(外務省幹部)と分析しており、両国への働きかけを強める方針だ。
 日中韓は14〜16日、3カ国間FTAの締結に向けた産学官による共同研究の7回目の会合を韓国の平昌(ピョンチャン)で開く。最終日に発表する報告書では、貿易や投資の自由化を巡る各国の主張を盛りこみつつ、早期の交渉入りを提言するとみられる。
 これを受けて日中韓の3カ国政府は、実務レベルで交渉の体制づくりやスケジュールの検討を開始する。来春に中国で開く日中韓首脳会談でFTAの交渉入りで正式に合意する見通しだ。夏にも交渉をはじめ、早期の妥結、署名を目指す。

日本は投資協定とFTAを通じて、アジア太平洋での広域経済連携を推進する考え。ただ、中国は自国の産業を育成する観点から工業品の関税引き下げには消極的だ。日本が輸出増を見込む自動車や電気製品に関しても譲歩を引き出すのは容易ではない。
 外国企業の投資活動への規制を緩和する日中韓投資協定は、14日にも開く14回目の交渉で実質合意する見通し。来春の日中韓首脳会談で署名し、来年中に発効する段取りだ。企業などの知的財産権が侵害されないよう保護規定を盛りこむほか、国際法に基づいて紛争処理できるようにする。現地企業からの部品調達や技術移転に関する規制も受けにくくする。

TPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題をきっかけに、にわかに話題になったFTA(自由貿易協定)だが、その賛否と交渉の行方はともかく、日本のTPPへの参加が、カナダ、メキシコのTPP参加を促したり、この記事にあるような日中韓FTA交渉の進展をもたらしたりと、アジア太平洋地域における自由貿易圏の形成に大きな影響を与えたことがわかる。

アジア、欧州、北米、南米、アフリカ、オセアニアなどの地域で、その主要国がFTAを結んでいないのは東アジアとアフリカぐらいなものだ。TPP反対派の中には、TPPよりもアジアを重視すべきだというものもいたが、TPPへの参加が奇しくも東アジアにおけるFTAの進展も後押ししているというわけだ。

中国と韓国との貿易額は、それぞれ世界全体との貿易額の20.7%と6.2%を占めており、合計すると日本全体の貿易の4分の1を占めることとなる。このため、日中韓FTAの影響は、TPPよりも大きなものとなることが分かる。

そして、それよりも重視したいのはFTAに先行して投資協定の合意が得られそうにあることだ。貿易の自由化が中心であるFTAに対して、投資協定とは、外国投資家の権益を保護するものだ。日中韓の投資の流れを見ると、中国や韓国から日本への投資よりも、日本から中国や韓国への投資の方が圧倒的に多い。
このため、海外投資家の権益を保護する投資協定によって最も得をするのは日本であることが分かる。
特に、中国への投資については、中国日本商会が発行している『中国経済と日本企業2011年白書』に記されているような日本企業の中国政府の法体系の不備や規制に対する改善の要望を考えると、投資協定による投資家の保護の強化は日本企業にとって大きな利益をもたらすだろう。

今日はこの辺で