人材鎖国から労働市場のグローバリゼーションの時代へ

12月3日付日本経済新聞9面より

海外人材の活用・育成が最低水準 日本「鎖国」くっきり
経済のグローバル化が進む中、日本企業が国際競争力を保ち、成長を維持していくためには優秀な人材をいかに確保するかが重要なカギを握る。だが、データからは日本企業の「人材鎖国」ぶりがくっきりと浮かび上がってくる。

 「高度外国人材の活用は先進国の中でも最下位の状況だ」――。経済産業省が2010年6月にまとめた産業構造ビジョン2010は、日本の「人材鎖国」の現状を強調した。
 産構ビジョンが根拠として取り上げたデータが、大学など高等教育を受けた居住者のうち、国外から流入した外国人が占める比率だ。日本は先進国中でも最低の0・7%にとどまる。28・9%のオーストラリアや、10%台の欧米主要国と比べて圧倒的に低い。
 海外からの留学生の受け入れも日本は主要国で最下位だ。高等教育機関の在学者に占める海外留学生の比率は日本が3・5%。こちらも20%台の英国やオーストラリア、10%台の独仏にも大きく水をあけられている。

 日本は外から来る外国人に対して門戸を閉ざしているだけでなく、外に向かって日本人が出ていこうとしない「内向き」の傾向も垣間見える。スイスの経営開発国際研究所(IMD)が毎年まとめる世界競争力年鑑。今年5月に公表した11年版の国・地域別ランキングでは、日本人の内向き傾向を裏付けるデータがずらりと並んだ。
 企業ニーズに適合した語学力を獲得できているかというランキングでは日本は調査対象となった59カ国・地域のうち58番目と最下位グループ。経営マネジメント層の国際経験の豊富さは54番目、学生の留学経験も47番目と低迷。いずれも国際競争力の基盤をなす重要な要素だ。

 日本総合研究所の山田久調査部長は「経済のグローバル化が進む中、3つの面から、日本は『人材開国』が避けられない」と強調する。
 1つはグローバル経済の深まり。企業は国内事業の支えとして海外事業を位置付ける発想から、世界で稼ぐために国内事業をどう再構築するかという発想の転換が必要になった。
 もう1つは経済成長のけん引役が新興国にシフトした結果、新興国に特化した商品や販売戦略が不可欠になったという点だ。日本で開発した商品をアレンジしただけで通用した先進国とは勝手が違う。
 そして3つ目は当然だが、人口減少で日本市場の成長余地が限られ、海外にしか活路がないという現実。日本人の駐在員が海外拠点を監督・監視する方式のままでは現地の優秀な人材は集まらず現地企業との競争でも生き残れない。3つの課題解決に向けて「人材鎖国」の見直しが不可避になっている。

12月に入り、就職活動が解禁された。私が学生のころは就職協定があり、4回生の6月から就職活動が本格的に始まり、7月の頭くらいまでには大半の学生の就職が決まったものだが、時代もだいぶ変わってきた。今では、3回生の12月から就活が始まっても「短期戦」と言われるんですね。

今の学生が大変なのは就職活動の長期化(我々からすると今の就職活動は長すぎる)だけではない。就職活動に関しても、国際化が進んでおり、ライバルは日本人だけでなく外国人留学生にまで広がっていることだ。上の記事で述べられているように、日本は他国に比べて海外人材の活用、および国内人材の国際化の経験が少なく、そのことが日本企業の国際競争力に影響を及ぼしていると考えられるようになってきた。

このため、グローバル競争への意識が高い企業ほど、優秀な外国人材の活用に力を入れてきつつある。
同日の日本経済新聞1面では、その様子についてこう書かれている。

「ガラスの天井」壊せ 国籍不問世界にライバル (ニッポンの企業力 人財を生かす より)

中国の北京と上海で11月、来夏に卒業を控えた清華大学など一流大学の4年生と、日本企業の「集団面接会」が開かれた。企画したのはリクルート。日本からNTTや京セラ、花王三菱商事など42社が参加した。
 「志望動機は?」
 「自分の力が海外で通用するか、御社で試したい」
 面接に来た中国人学生1000人の多くは英語はもちろん、流ちょうに日本語を操る。4日間で約150人に内定が出た。
 中国の大学1学年の人数は700万人と日本の10倍強。リクルートは1万人の応募者の中から日本企業の求人に適した学生を事前に絞り込んだが、中国も就職難。優秀な人材には事欠かない。「将来、現地法人の経営を任せられるような幹部候補を採りたい企業が殺到している」。リクルートのアジア人材事業責任者、伊藤純一(46)は話す。

 2020年に本社社員の半分を外国人に――。イオンは今年、こんな目標へ大きく踏み出した。大学新卒採用の説明会は国内で1回のみ。あとは海外行脚に費やした。来春の採用内定者は2000人のうち400人が外国人だ。
 同社は今年度以降、北京に中国本社、クアラルンプールにアセアン本社を順次設立し出店を加速する。グループ人事最高責任者の大島学(47)は「海外では日本のイオンの常識は通用しない。国籍や性別を問わず、現地法人にはその国情に精通した人を増やす」。今年6月にはマレーシアの現地法人トップに生え抜きの女性社員、メリー・チュー(50)を抜てきした。

 海外に拠点を築いても日本人が幹部ポストを占拠していた日本企業。生産拠点ならコストを削減できても、商慣習やニーズの異なる消費市場の攻略には通用しない。日本人しか昇進できない「ガラスの天井」を壊し、現地の優秀な外国籍社員を取り込めるか。製造業でも改革が始まった。

 「このポストには本当に日本人が必要ですか?」
 日立製作所グループの白物家電子会社と日立建機は今年、海外拠点幹部の総点検を始めた。販売競争が激しい新興国を中心に、報酬と成果をもとに最適人材を配置するのが狙いだ。
 日立は今年、37万人の連結社員の人事をデータベース化し、課長級以上の評価の格付けを統一した。「地域やプロジェクトに応じて世界中から最もふさわしい人を選ばないと海外勢に対抗できない」。社長の中西宏明(65)は語る。

 米IBMや米P&Gなどは1990年代から本格的なグローバル化を推進。優秀な現地社員は世界で情報を共有し、幹部に登用する仕組みが浸透している。行き着く先は経営陣の多国籍化だ。スイスのネスレは9カ国の人材で構成する。こんな仕組みがない限り「日本企業に優秀な社員は来ない」。スイスのビジネススクールIMDの教授を兼任する一橋大大学院教授の一條和生(53)は断言する。

 ライバルは世界中の同僚。それは日本人というだけで昇進が保証される時代の終わりを意味する。
 フィリピンやオーストラリア、ブラジルなど07年から1兆円超を投じてビールや食品など海外企業を買収してきたキリンホールディングス。常務の小川洋(56)は「国際感覚に優れた人材育成が急務」という。
 中堅社員を選抜し英語で1年間、企業経営を学ぶ研修を3年前から始めた。卒業生は85人。今春には海外に11人派遣した。東南アジア統括会社で販売戦略部長を務める佐藤哲彦(40)もその一人。国内営業畑が長く英語も不得手だったが、今では買収企業との連携に奔走する。「キリンは日本で有名でも海外では無名。成功するまで帰らない」
 社長の三宅占二(63)は「外国人から刺激を受け、内なる国際化を進めることも必要」と指摘する。切磋琢磨(せっさたくま)がニッポンの企業力を高める。

厳しい時代になってきましたね。

今日はこの辺で