中国の成長と低・中所得国の成長との関連について

VOXよりGlobal imbalances, the renminbi, and poor-country growthを読みました。

(要約)
The debate over global imbalances has a sharp focus on China. But this column says the debate is missing a crucial point: that China’s growth has been good for poor countries, so that a renminbi appreciation slowing Chinese growth will also hurt many other poor economies.
(訳)
グローバル・インバランスの議論は中国の動向に注目を集めている。しかし、このコラムでは見落とされている重要な論点について述べている。それは、中国の成長は世界の貧しい国々に恩恵をもたらしており、中国経済を減速させる人民元切り上げは同時に多くの貧しい国々に損失を招くことになるだろう。

 人民元引き上げに関してはG20の場でも議論になるなど、欧米諸国による中国への圧力が日増しに強くなっており、このことから人民元切り上げがもたらす経済的影響についての研究が次々と出されている。今回紹介するブログ記事は、人民元切り上げがもたらすであろう中国経済の減速が低・中所得国に与える影響を、中国経済とこれらの国々の成長率の相関関係を調べることによって分析している。
 中国経済の成長が低・中所得国に与える影響は主に二つあると考えられる。一つは、中国の経済成長が、これらの国の中国への輸出を増やすことを通じて経済成長を促進させる効果、もう一つは、中国の輸出製品(労働集約的な製品が中心)が低・中所得国の主力輸出製品と重なることから、中国の輸出供給の増加による国際価格の低下を通じてこれらの国の交易条件(輸出価格/輸入価格)を悪化させることにより経済成長を弱める効果である。
 このブログでは、中国の経済成長と低・中所得国の成長率の相関を調べたところ、2000年代以降中国の経済成長が低・中所得国に与える影響は強くなっており、中国の経済成長率が年率1%低下すると、低所得国の経済成長率は0.56%、中所得国の経済成長率は0.36%減少させることを明らかにされている。このような結果は、中国の輸出品目が90年代には労働者約産業が中心であったのが、技術進歩により資本・技術集約的な輸出の割合が増えてきたために、輸出の増加を通じた低・中所得国への悪影響が弱くなってきたことから生じていると、このブログでは考えられている。これに対し、OECD諸国(先進諸国)の経済成長率が低・中所得国の経済成長に与える影響は近年下がってきており、OECD諸国の経済成長率が1%低下するときに中所得国の経済成長率は0.3%となっている。このため、人民元切り上げによる中国経済の減速は低・中所得国の経済に悪影響を及ぼすだろうと結論付けている。

今日はこの辺で