外国資本による買収が国内のR&D投資に与える影響

VOXよりWhat happens to R&D in domestic multinationals after foreign acquisition?を読みました。

国境を越えたM&Aが増加することによって、国内の大企業が外国資本に買収されるケースが増えているが、今回紹介するブログ記事では、このような外国資本による国内企業の買収が、買収された国内企業の本部としての活動やR&D活動にどのような影響を与えるのかについて、デンマークオーフス大学のBandick氏とドイツのキール世界経済研究所のGorg氏とスウェーデンのオレブロ大学のKarpaty氏による研究が紹介されています。
 彼らは、スウェーデンにおいて、自動車メーカーのボルボ、サーブや医薬品メーカーのアストラなど、スウェーデンを代表とする国内の多国籍企業の所有者が外国人になっていることから、外国資本によって所有された国内多国籍企業スウェーデンにおけるR&D活動の規模をどのように変化させたかについて1993年から2002年までのデータを用いて分析しています。
 スウェーデンと言うと、エリクソンやイケア、H&Mなど多くの多国籍企業を輩出している国であり、グローバリゼーションを推し進めている国です。下図は、ブログ記事内にあった製造業の雇用の中でスウェーデン資本の保有する多国籍企業と外国資本の保有する多国籍企業の雇用が占める割合を示したものだが、両者を合わせた多国籍企業が雇用に占める割合は大体80%ぐらいで一定ですが、両者の比率を見ると外国資本の保有する多国籍企業の割合が増えていることがわかります。

 このような、外国資本による保有が国内のR&D投資にどのような影響を与えるのか、Bandik氏らの研究によると、まず外国資本所有の多国籍企業と国内資本所有の多国籍企業との間で平均的なR&D集約度(売上高に占めるR&D投資額の割合)に大きな違いがないことを示しています。さらに、外国資本に買収された企業の国内におけるR&D投資は減少するどころか、買収されなかったときと比べて3〜10%増加していることを計量分析によって明らかにしている。
 つまり、外国資本による国内企業の買収というのは、国内のR&D活動を縮小させるどころか、反対に拡大させる効果を持っているというのが彼らの結論だ。外国資本による国内企業の買収については、否定的な見解を示す人々も多いが、このブログ記事の研究結果からは、外国資本による国内企業の買収は国内のR&D活動を活発化させ経済成長につなげることができることが分かるのだ。

今日はこの辺で